派手とは無縁の開業物語

悩みを抱えてCoParentsのドアを叩くのは、主に総合職や事務系の会社員のワーママさんです。別の言葉で言うと、デスクワークでパソコン仕様や会議が多いワーママさん。

今回は違います。40歳の木村葵さん(仮名)は仕事人生の全てを鍼灸師として過ごしてきました。小学校1年生の息子さんを育てながら、勤務先で鍼灸・マッサージの仕事をすることに、体力面での限界を感じつつありました

木村さんは9回のコーチングを通して、ご自身の鍼灸・マッサージ店を開業する決意を固めます。ママで独立!開業!というと、キラキラした派手なイメージがあるかもしれません。でも、木村さんの開業物語は派手とは無縁。不安で開業する・しないの間を行ったり来たり。まずは週1回の営業から。

仕事内容を問わず、変化に不安を感じる全てのワーママさんの心の琴線に触れるはずです。ぜひお読みください。(聞き手:CoParents代表 古村千尋)

目次

体力面で働き方に不安が…

–CoParentsのことはどのように知りましたか?

Instagramを眺めていた時に、偶然CoParentsの投稿が目に留まりました。

ちょうどその頃、今の会社にこのままずっといるべきか、働き方をどうすべきか、と漠然と悩んでいました。今後のキャリアや働き方について、プロの専門家に相談してみたいと思っていました。CoParentsは悩みを抱えるワーママ向けのサービスと知って、体験コーチングを受けてみることにしたんです。

–コーチングという言葉は、CoParentsを知る前からご存知でしたか?

「カウンセリングとは違うものらしい」という程度の、曖昧な知識しかなかったです。

–働き方に悩まれていたとのことで、当時のお仕事はどのような状況でしたか?

週5日、時短正社員として鍼灸の仕事をしていました。ただ、鍼灸の中でもリハビリや高齢者ケアが主で、体力的にきついと感じていました。5年後、10年後もこの仕事を続けられるのかいう不安がありました。

–体験コーチングで隈部コーチ(くまさん)を選ばれ、くまさんでコーチングを継続されました。継続しようと思われた理由を教えていただけますか?

くまさんの体験コーチングが良かったんです。もっと長くくまさんとお話したいなと思いました。だから、他のコーチを試さなくてもいいかなと思って、すぐに継続を決めました。

開業でも勤続でも不安だらけ

–これまで9回コーチングを受けられていますね。これまでのコーチングはどんな流れでしたか?

3回目くらいまでは、心の中にあるものを吐き出していく期間でした。

4回目、5回目で、「やっぱり自分で鍼灸院を独立・開業しよう」という具体的な方向性が見えてきました。しかし、会社を辞める決心はついておらず、6回目、7回目では、勤めていた会社の中で働き方を変えられないか上司に相談するなどのアクションを取りました。その結果、この会社の中では自分の望む働き方は難しいと分かりました。

そんな紆余曲折を経て、最後の2回のコーチングでは、ずっと昔に考えていた目標を思い出すことができました。そして、独立・開業するという決意がようやくブレなくなりました。

最終的に、開業準備のために、週5時短正社員から週4のパートになることを決めました。最後の方のセッションでは、くまさんと自分の鍼灸サロンの店名を考えたりもしていました。

–すごい変化ですね…。1つずつ伺っていきたいと思います。最初の方の「吐き出し期間」では、具体的にどのようなことを話されましたか?

今は開業を目指す決意ができましたが、当時は会社の中で体力面を考慮した働き方に変えられないかな、とも思っていました。

迷いをくまさんに吐き出して、今の会社を続けるにしても、開業するにしても、私が何を不安に思っているのかを、1つずつ洗い出して、1つずつ対処法を話し合いました

「今の会社にいなければならない理由は何か?」という問いを、繰り返し繰り返し考えては吐き出していました。開業への迷いで同じところをぐるぐるしていました。当時は一歩進んで二歩下がる、みたいな感じでしたね。何度も何度も不安に思うことを隈部コーチに聞いてもらって、客観的に整理するのを手伝ってもらって。そうしているうちに、だんだんと自分の望みが明確になり、具体的な形になっていきました。

–最初から開業という選択肢はあったのですね?

はい。ただ、当時は不安の方が大きくて、開業したいという気持ちはそこまで強くなかったです。

–会社で働き続けるにせよ、開業にせよ、当時最も大きな不安だったのは何だと思いますか?

開業に関しては、「失敗したら恥ずかしい」という気持ちがありました。何かトラブルがあった時にすぐに助けてくれる人がいないことも不安でした。あと、「開業は本当に自分のやりたいことなのだろうか?」という問いにも答えが出ていませんでした。

会社で働き続ける選択肢については、それまでは鍼灸の実務と事務を兼任するスタッフがいました。実務を続けながら、体力も少しセーブできる兼任スタッフは魅力的だと思っていました。

しかし、事務関係は新しく採用した事務員に集約されることになりました。魅力的だと思っていたポストが、自分でコントロールできない外部要因のせいで消えてしまったんです。一時は「もういっそ経理の資格を取って事務員になろうか」と考えるほど、かなり迷走していました。

あとは夫との接し方の悩みを少し話したりしました。

気持ちに一発逆転はない

–開業へと気持ちが傾いていった4回目、5回目のセッションでは、くまさんとどのような話をしましたか?特に、どのように開業を決意する方向になったかを伺いたいです。

くまさんと話をしていく中で、「長く働きたい」という思いが強くなりました。長く働くには開業が良さそう、というのもありましたし、くまさんと話しているうちに、お店について具体的に考えたくなっていきました。

くまさんと話しながら、どういう店を作りたいのかのコンセプトを一緒に考えました。リラクゼーション寄りにして、疲れている人を癒やしたい、とか。

でも、コンセプトを考えながらも、「いや、やっぱり不安、ダメかも」となって、やる・やらないの間で気持ちが揺らいでいました。くまさんの前でも、そんな気持ちの行ったり来たりは全部話していました。

くまさんと、「私は何が好きなのか」「何を大切にしたいのか」という話をたくさんしました。そして、やりたいことは今の会社ではできないのか一人でなければできないのか。問いに1つずつ向き合いながら、どの選択をしたいかを考えました。

–開業に気持ちが傾きつつ、まだ決めきれない。そんな難しい時期に、くまさんの発言で印象に残っていることや、今後に繋がる気付きはありましたか?

 「心を満たすマッサージと鍼がしたい」という思いは、最初から自分にあった考えですが、くまさんに上手に前の方に引き出してもらった気がします。

印象に残っているくまさんの言葉は、「気持ちに一発逆転はない」です。なんというか、気持ちが、ぐるりと急に変わることはなくて。小さいことを1つ1つ考えていく。変化に対して不安な自分の気持ちに寄り添ってあげる。それの繰り返しで少しずつ自分の気持ちは醸成されていく。迷っていた私にはしっくりくる言葉でした。

関連して、くまさんから「サボタージュ」という言葉を何度も聞きました。

–サボタージュは、変化を恐れて自分を制限してしまう思考のことですね。

コーチングを受ける前までは、サボるという意味だと思っていました(笑)私はサボタージュが多かったと思います。変わらない方がいいんじゃないかと思って、変化に及び腰でした。

不安な気持ちが突然パーッと自信に満ち溢れることはない。1つ1つの不安に対して、真摯に向き合うことを辞めなければ、「よし、やるぞ」と自分を変える決意ができるようになると学びました

あと、くまさんから「これまで葵さんがやってきたことは無駄じゃないんだよ」と言われた時は泣いてしまいました。

勤務先で新事業としてできないか?

–6~7回目のコーチングの時期に会社の中で働き方を変えられないか交渉したと仰っていましたね。独立開業に気持ちが傾きつつある中で、会社と交渉したというのは、どういうことだったのでしょうか?

会社を辞めないで、店舗を持つ道を模索しました。リハビリが主事業の会社だったので、新たにリラクゼーションの部門を作って、新店舗を私が責任者として持てないかなと考えました。

この手の話を上司にするのは気が引けました。だから、「次のセッションでくまさんに報告する」という目標を掲げて、頑張って上司と話をしました。

–上司からの回答は良いものではなかったようですが、詳しく教えて頂けますか?

上司曰く、リラクゼーション部門を立ち上げるという話は過去にも出たものの実現しなかったと。だから、「ダメとは言わないけど、組織はそこまで協力してくれないと思う。やるなら今の業務を減らすことなく、追加で0から100まで新部門のことをやることになるよ。」とのことでした。

子育てしながら、会社の応援がない中で、既存業務×新規事業立ち上げをする気力はないと思いました。

–会社に在籍しながら、理想の店舗を持つ道がほぼ不可能とわかった後はどうされたのですか?

「心を満たすマッサージと鍼がしたい」という方向性をベースに、お店の具体的なコンセプトを固めていきました。短い時間で多くの人を呼ぶのではなく、時間をかけて疲れている人に寄り添いたい。女性向けに、全身マッサージと美容鍼灸を長めの時間で提供しよう、とか決めていきました。

あと、いきなり会社を辞めて店を借りるのではなく、まずはレンタルサロンを利用して始めようか、といった現実的な話もしました。

でも、やっぱりモチベーションが湧かないなぁと思うこともありました。そんな時はくまさんに「葵さんの本当に望むことは何でしたっけ?」と問いかけられて、「そうだ、私は長く仕事をしたいんだ」というところに立ち戻り、引き続き開業する・しないの間を行ったり来たりしつつ、開業に向けて1つ1つ決めるべきことを考えました

私は本当に若い時からずっと鍼灸・マッサージの仕事しかしていないので、視野が狭いのではないか、とずっと思っていました。だから、くまさんに話を聞いてもらいながら、自分の望んでいるものを具体的に言葉にする作業を手伝ってもらったのはとても有意義でした。

不安を具体化して潰して開業を決意

–会社でやりたいことはできない。お店のコンセプトは固まってきた。まずは小さくレンタルサロンから始めるという策もできた。それでも、開業に踏み切れない理由は何でしたか?

 私はすぐに「やっぱりやめようかな」と思ってしまうタイプなんです。その背景には、最初の方にも話しましたが、「失敗したら恥ずかしい」という気持ちや、「莫大な借金を背負ったらどうしよう」といった漠然とした不安がありました。別に莫大な借金をする予定なんてなかったのに(笑)

今の会社で我慢していれば毎月安定した給料がもらえるのに、という気持ちにもすぐなってしまっていました。

そんな時、くまさんは「ちょっと待って下さい。今の会社にいたら10年後の葵さんはどうなっていますか?」と問いかけてくれました。今の働き方は体力的にきつく、10年後も続けられる自信はない。でも私は長く働きたいから、働き方を変えないと、とスタート地点に帰ってくることができました。

また、くまさんには「失敗が起きた時に実際どういう手順を取るんですか?」とも聞かれました。「鍼灸師なら保険に入るんです。」と答える間に、「会社員でも独立しても同じ保険に入るから一緒か」と気付けました。

あとは、くまさんの「誰に対して恥ずかしいんですか?」という問いかけは大きかったですね。私は「失敗したら『あの人うまくいかなかったらしいよ』と噂されるのが恥ずかしい」と答えました。くまさんは「それはノイズだよね」と言ってくれました。確かに、そんなの本当にやりたいことと比べたら些末な雑音だなと。

お金が稼げなくなったら夫に悪いな、という不安もありました。くまさんに「その思いを旦那さんに言ってみたんですか?」と聞かれました。確かに私が勝手に悪いなと思っているだけだなと思って、夫に相談してみました。結果、夫は特に気にしていないと分かりました(笑)

–1つ1つの不安にくまさんがツッコミを入れていった感じですね。

はい。私はくまさんに何度も同じ不安の話をしていた気がします。そして、くまさんがやったことって、特別な解決方法じゃなくて、「それなんで?」って聞くこと。くまさんの質問に答えることで、不安を1つずつ潰していって、本当にやりたいことへの思いを確かにしていくというプロセスでした。

今は私が自分でくまさんとのやりとりを心の中で再現できるようになってきました。「1人で開業したら雑談相手がいなくてストレスが溜まりそう」という思いがもたげたら、「仕事の雑談がしたければ、昔の同僚や専門学校時代の同級生に連絡すればいい」と考えられるようになりました。私にとっては大きな変化です。

–最終的に開業に踏み切れた決定打のようなものはありましたか?

「長く働きたい」という思いはずっとありましたが、その原点を思い出せたことかもしれません。

くまさんとのコーチングを経て、「75歳までマッサージをしていたい!」という昔の目標の原点を徐々に思い出していきました。

そもそも、長く働ける資格が欲しくて、マッサージと鍼灸の資格を取ることにしたんです。自分でお金を稼いで生活したいという思いがありました。実際に70歳過ぎの鍼灸師の方と一緒に働いたことがあって、その人がすごく自由に働いているように見えて、私もこんな感じで働けたらいいな、と思っていました。

そんな思いをしっかりと再確認できたので、独立開業することにしました。それで現在は週5の時短正社員から週4のパートタイムになって、週1日を開業準備に充てる日々を送っています。

周囲を気にして本音を話せない人はぜひコーチングを

–今後もコーチングを継続する予定はありますか?

9回受けて、開業を決意できました。今はとにかく開業に向けた行動に集中します。開業後にまたモヤモヤしたときはくまさんにコーチングをお願いしたいです。

–木村さんの今後の展望をお聞かせ頂けますか?

今は週1日を開業準備に充てていますが、まずは週1から自分のサロンを始めていきたいです。そして、軌道に乗ったら週4のパートを手放して自分のサロンを専業にするのが今後の目標です!

–コーチングを受けて開業を決意された木村さんから見て、コーチングはどのような人におすすめしたいですか?

私自身もそうなのですが、周りの人に「よく思われたい」と思っちゃう人にはお勧めです。仕事やキャリアの悩みがあっても、友達の前では「大したことないんだけどね」と前置きしてしまうような人。周囲に心配をかけたくなくて、夢のような話をするのを躊躇ってしまう人。そういう人はコーチングで本音を話す練習をすると良いと思います。

あと、開業などの人生の大きな選択を、自分の気持ちが固まっていない段階で周囲に話すとダメージを受けることもあると思います。そういう時はコーチングで話すのがベストですね。

–CoParentsをより良くするために、何かアドバイスやコメントはありますか?

特にありませんが、最近私もCoParentsのお客様インタビュー記事を読んでいて、こういうコンテンツがあると、どんなことでも相談していいんだ、と分かりやすくて良いなと思っています。

というのも、私も最初は自分の悩みがコーチングに当てはまるのか、コーチングってキャリアをガンガン積む人向けなのかな、と不安に思っていたんです。だから、実際にコーチングを受けたワーママのリアルな話を事前に知れるといいですよね。

–木村さんの話もきっと誰かの参考になると思います!貴重なお話を聞かせて下さり、ありがとうございました!

おわりに

ワーママという立場で、仕事に関して大きな選択をするときって不安ですよね。新しい環境でやっていけるかという不安に加えて、家庭に悪影響が出ないかも不安だと思います。

何かを選択する時に不安を感じたら、木村さんに隈部コーチが伝えた「気持ちに一発逆転はない」という言葉をぜひ思い出して下さい。もちろん、天から啓示を受けたかのように「これをやる!」と決意できることもあるでしょう。しかし、多くの人の意思決定は、自分と本音、各選択のメリットとデメリットとじっくり向き合いながら気持ちを固めていくものです。

この記事を読んで、CoParentsのコーチングの関心を持った方はぜひ体験コーチングにお申込み下さい。

木村葵さん(仮名)

鍼灸師。40歳。もうすぐ小学校1年生の息子さんがいる。

ワーママ向けコーチングCoParents所属コーチ 隈部敦子

隈部 敦子 (木村さん担当コーチ)

CTIジャパン/米国CTI認定プロフェッショナルコーチ(CPCC)

大学卒業後、大手総合食品メーカーで20数年勤務。事業企画・マーケティング・賞伝部門に従事。
プライベートでは高校2年の息子、中学1年の娘と忙しくもにぎやかな毎日を過ごしている。

コーチングとの出会いは子育ての悩みから。仕事・子育てにいっぱいいっぱいですべてが中途半端・・・
一体何のために生きているんだろうという中でコーチングを体験し、人生が大きく変わったと感じている。

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