人生のすべてがひっくり返った時

市原宏美さん(仮名)。3歳の娘さんがいる、金融機関勤務の35歳ワーママです。新卒の頃から、子育てと仕事の両立を重視して、職業選択や部署異動を考えてきました。
そんな市原さんの人生を、根底から揺るがす出来事が起こりました。夫の海外赴任が決まって、帯同するために休職する方向で段取りを進め、休職帯同中に第2子を出産すべく、妊娠。しかし、夫の海外赴任の話はなくなり、お腹のお子さんは天国へ旅立っていきました。
市原さんはこう思いました。
「今の私では、今の状況に太刀打ちできない。」
人生のすべてがひっくり返り、なす術なく立ち尽くしたワーママが、コーチングを通じて自分を見つけ、目指す北極星を見出すまでのお話を伺いました。(聞き手:CoParents代表 古村千尋)
流産に海外帯同取り消し…人生すべてがひっくり返った時
–CoParentsを知ったきっかけは何ですか?
Instagramで代表の古村さんを知ったことです。古村さんと私は同い年で、子供の年齢も近い。また、私は金融機関で働いていて、古村さんも以前に金融業界にいたとのことで、親近感を感じました。
–CoParentsのコーチングを受けようと思ったきっかけを教えていただけますか?
元々、別のコーチングサービスを1ヶ月間受けていました。ただ、高額で、コーチの予約が取り辛いのが難点でした。あとちょっと受講スタイルが私の状況にベストフィットはしていなくて。
それで別のコーチングを探していたところ、共通点の多い古村さんが代表のワーママ向けコーチング会社があることを知って、体験コーチングを申し込みました。
–コーチングの継続を希望されていたのは、何か悩みがあったからですか?
勤務先の在宅勤務可能日数が減ってしまい、生活リズムが変わって、育児との両立が難しくなったんです。それで、転職の戦略を考えるのに前のコーチングを始めました。
前のコーチングでは1人目の育休明けからずっとしていた仕事内容を活かして、具体的なキャリアアップ&転職計画を立てるところまで行きました。
しかし、前のコーチングを終了したくらいの時期に、人生の状況が大きく変化しました。元々夫が海外赴任するかもしれないという話があって、それに合わせて私自身も2人目を妊娠しました。
–海外への帯同休職をして、その間に2人目のお子さんを出産するという計画ですね。
はい。海外赴任に合わせて出産の数カ月前から無給で休職する予定で、業務の引継をしていました。
でも、引継ぎが終わるころに、お腹の子が育っていないことが分かりました。さらに、夫の会社都合で、夫の海外赴任の話がなくなりました。
私は流産前とは別の部署で仕事をすることになりました。業務内容も全然違います。前のコーチングでは、前の業務の経験を活かして、キャリアアップ&転職しようという話になっていたのに…
仕事も、海外赴任も、お腹の子も、全てがなくなってしまった時に、「これはかなり辛いな」と感じました。自分の軸がしっかりあれば、色々と判断できたのでしょう。しかし、当時の私に自分の軸はなかったのだと思います。
だから、もう1回別のコーチングを受けようと思いました。
–複数のコーチと体験を受けられましたが、最終的に隈部敦子コーチ(くまさん)で継続するに至った理由は何ですか?
正直どのコーチも良かったんですよ。みんな私を見てくれていました。
その中でもくまさんは、つい話過ぎてしまう私を必要に応じて止めて、問いかけてくれました。その質問が本当に鋭い。くまさんのコーチングを受けたら問題解決できそうだと感じ、くまさんで継続することにしました。
会社の評価シートに囚われた生き方

–くまさんとのコーチングの継続セッションはどのように進んでいきましたか?
私は「鍵を見つける6回コース」を申し込み、6回終了後に、メンテナンスコース(3回券)を追加購入しました。ちょうど昨日(このインタビューの前日)に7回目のセッションが終わりました。
1回目から5回目までは、ずっと自分探しをしていました。1回目のセッションでは、どんなに楽しい仕事でも、自分の健康と家族との時間がなければ充実感が得られないことを確認しました。
流産前の業務は、残業が多く、子供と会える時間が週に2回程度しかありませんでした。朝も夜も夫に頑張ってもらって、私の母にも手伝いにきてもらう状況が続いていて。家族の時間がなければ、やりたい仕事ができても充実感は得られない、という話をくまさんとしました。
–1回目は市原さんにとって大切なものを触りにいくような回だったのですね。
そうですね。そして2回目のセッションでは家族との時間が大事という点をもう少し掘り下げて、「子供と濃密な時間を過ごしたい」という自分の本音に気付くことができました。
加えて、私が会社の評価シートに囚われた生き方をしていることも分かったんです。
–2回目のセッションでその2つの気付きがどのように生まれたのかお伺いしたいです。
年末年始にかけて友人に会う機会がありました。その子は結構出世しています。話を聞いているうちに、私もその子の考え方に倣うのが良い気がしてきたんです。
そんな話をくまさんにしたら、「友達の価値観は真似しないで。宏美さんは宏美さんだから。」と言われました。まぁ、当たり前のことですが、当時の私はハッとされましたね。
–元々、自分の軸がないから公私両方の苦しい激動に耐えられないということで、CoParentsのコーチングを始めて下さったわけですもんね。上手くいっているご友人の真似をしたくなる気持ちもわかります。くまさんが引き戻してくれてよかったですね。
そうですね。自分の軸がまだわかっていなかった当時の私は、出世している=会社で評価されているということで、会社の評価を求めようとしていたのかもしれません。
この話をきっかけに、流産前の部署での評価シートの話を思い出しました。会社の評価シートに自己啓発の計画を書く欄があって、私は「英語を頑張りたい」と書きました。「海外勤務の可能性もあるから」みたいな理由付けをして、TOEICの目標点数を書いたのですが、本音は別のところにありました。
私は子供に英語をずっとやらせていて、子供の英語が上達しているのを見ると嬉しい気持ちになるんです。それで、私も子供と一緒に英語の勉強ができたら楽しいだろうなと思いました。
すると、上司から「今の業務に英語は1mmも関係ないから書くな」と言われたんです。あぁ、会社に本当にやりたいことを言ったらダメだなと思いました。
それで、そのエピソードもくまさんに話してみました。
–くまさんからはどんなフィードバックがありましたか?
「上司の言うことが常に100%正しいわけじゃないし、一生その部署にいるわけでもないよね。勤務している部署と直接関係ない他のスキルを身につけるというのも選択肢としてありじゃないか」と。
確かに、私って変に真面目なところがあって、「評価シートの通りにやればいい」と思っていることにその時気付きました。でも、それでは会社の評価だけの人生になっちゃう。
さらに振り返ると、過去にファイナンシャルプランナーの資格を取ったのですが、それも当時の部署で「取った方が良い」と言われたから取りました。やっぱり、評価されるから資格を取ったんだなぁと。
–真面目な性格ゆえに、評価に加点になることを、もっと言うと加点になることだけをすればいいという考えになっていたんですね。でも本音は、何か学ぶにしても、お子さんと一緒に楽しめる英語などの方が良かった。会社の評価よりお子さんとの濃密な時間の方が大事だったと。
やっぱり子供のために稼ぎたい…??
–3回目のセッションはいかがでしたか?
どんな人に憧れるかというテーマで話しました。私が憧れているのは、子どもへの英語教育を極めているとあるインスタグラマーさん。そして、SNSで見かけた社労士の先生です。
お二人とも、独自のメソッドを作って提供している点が共通点でした。それで、くまさんに「あなたもそういう風にやりたいですか?」と問われました。
でも、なんか違うなと思って。仮に私の子どもの英語力が爆発的に伸びたとします。その時私は子供にした英語教育法を子供とセットで世の中に発信したいかというと、したくないなと思いました。
子どもに色々な経験はさせたいけど、子どもを商売道具にはしたくないなと。
–市原さんのやりたいこと、やりたくないことがまた1つクリアになった感じがしますね。
はい。ただ、コーチング時に取っていたメモを見返しながら今お話ししていますが、3~4回目はあまりメモが残っていません。当時は混沌としていて、手応えや進捗が感じられない時期でしたね。
–コーチングの進み具合は人それぞれですが、5回目前後くらいでスランプを感じる人が多い気がします。自己理解が進んで、「こんな風に生きたい!」が見つかったけれども、実際にやってみるとしっくりこない。あるいは、市原さんのように、「こんな風に生きたい」がまだ見つけられないなど。
そうなんですね。4回目も、あまりメモは残っていないのですが、1つ覚えていることがあります。それは、くまさんに、「宏美さんはやりたいことを実現するために、転職や部署異動といった『手段』に囚われがち。自分の気持ちよりも先に手段を考えてしまう傾向がある」と指摘されたことです。前後にどういう話をしたかは覚えていないのですが。
そして、5回目のセッションでは、「やっぱり子供に色々な習い事をさせたい」という思いが強いと感じました。そこで、くまさんに「子供の可能性を広げるために、私も稼ぎたい」という話をしました。
–くまさんから何かフィードバックはありましたか?
はい。「では、望む子育てをするのに、どれくらいお金が必要なのか、ライフプラン表を作ってみたらどうか」という宿題が出ました。
再びの流産と社内での高評価の先に

–では、この次のコーチングではライフプラン表をもとに話をしたのでしょうか?
実は色々ありました。この後、私は再び流産し、手術のために1週間会社を休みました。その期間に、体を休めつつ、興味のある統計や教育の本をたくさん読みました。
くまさんからの宿題になっていたライフプラン表はファイナンシャルプランナーの方に作成してもらいました。結論、収入を今の水準から減らしたくないと思いました。
–仕事や日常生活から離れた時間で考えた結果、今の収入レベルを維持したいとなったのですね。すると、今の仕事を頑張って続けると決意されたのでしょうか?
いえ、実はもう1つ気付きがありました。1回目の流産の後に着任した新しい部署で、大きな社内プロジェクトに取り組んでいました。ただ、流産した後から始まって、また流産して穴を空けてという状態で、正直私の中ではプロジェクトどころではなかったんです。私自身はそのプロジェクトに全く興味を持っていなかったし、持てる状態じゃなかった。
でも、そのプロジェクトが社内で驚くくらい非常に高く評価されました。社内イントラに掲載されたり、会社の偉い人からもコメントされたり。
…私、全然嬉しくなかったんです。それでわかったんです。評価されるってこんな感じなんだって。
–少し前は「評価シートに囚われている」と仰っていましたよね。
まさに。でも、実際評価されてみると大したことはなくて。自身が熱意をもっていない仕事だと評価されても全然幸せじゃないとわかりました。 2回目の流産。子供のためにやっぱり稼ぎたい。興味のない仕事で評価されても嬉しくない。色々なことがあって、色々な気付きがあって、6回目のコーチングに臨みました。
コーチからの怒涛の質問
–6回目のコーチングはいかがでしたか?
私の人生の目的は「人の可能性を広げたい」という壮大なテーマであることに気付きました。コーチングが終わった後は不思議と涙が流れましたね。
–ライフプランを作成した結果や、社内プロジェクトでの気付きをくまさんに話した結果、その人生の目的に気付いたのでしょうか?
はい。くまさんに洗いざらい話しました。そして、やっぱり稼ぎたいし、仕事を辞めて子供の英語教育を極める道にも行けないと伝えました。
くまさんから「『仕事をやめてはいけない』『収入を維持しなければいけない』といった自分で作っている足かせがあるのではないか」と言われました。
–市原さんは、ご自身では「子供の可能性を広げるために稼ぎたい」と考えていたと思います。でも、くまさんは、「足枷を自分で作っている」とコメントしたのですね。コーチであるくまさんは、これまでの市原さんとの関わりや、「やっぱり稼ぎたい」と話したときの、市原さんの表情や仕草などの非言語要素などを総合勘案してフィードバックしていると思います。くまさんのコメントを受けて、どう感じましたか?
確かにくまさんの言う通りかも、と思いました。
じゃあ「仕事を辞めてはいけない」「収入を維持すべき」という足枷を取ればいい、という話ですよね。でも、その足枷を取るのはとても勇気が必要だなと。
そこから、くまさんとたくさん話をしました。確か私が、「上手く子育てをしたい」みたいなことを言ったのかな。すると、くまさんから「うまくいかない子育てなんてあるんでしょうか?」と聞かれました。
子供って色々だし、子育てが上手いか上手くないかなんて人の価値観次第ですよね。だから、「上手い子育て」という概念は存在しないと気付きました。
では、私が「上手く子育てをしたい」と表現した思いは厳密には何なんだろう?と思いました。きっと、「子供の可能性を見抜いて生かしてあげたい」ということだと思いました。
–くまさんの問いかけによって、市原さんにとって理想の子育てが何なのか、より具体的に、正確に把握できるようになった印象を受けます。
そうですね。その日はくまさんから本当にたくさん質問を受けました。流産手術で入院中に、統計や教育の本をたくさん読んだ話もしたんです。その中で「科学的根拠に基づいた子育て」みたいな本を読んだことを報告しました。
すると、くまさんが「きっと宏美さんは、子育てにいつも何かしら不安を抱えていて、安心したいからロジカルなものに頼っているのでは?」と言われました。
–グサッ…という感じですね(笑) ただ、くまさんはそういった本を読んでいる人全員にそのコメントはしない気もします。
そのフィードバックも私についてはその通りだなと思いました。
そして、「『子供の可能性を見抜いて生かしたい』というのは、全ての子供についてか?自分の子供についてか?なぜ子供なのか?」という質問もされました。
その質問を受けて、私自身「なぜ子供だろう?」と思いました。子供は純粋で可能性を秘めているように感じるからなのか。大人は価値観が固定されているからもうダメなのか。
くまさんとのセッションで色々考えているうちに、1つのことを思い出しました。実は私、友人にコーチングをお勧めしたんです。友人とお互いのキャリア相談をし合う中で、「実は最近私はコーチングを受けてて」という話をしました。その子はワーママではなく独身女性。なんと、私の話を聞いてCoParentsではないところでコーチングの体験を受けたそうです。
私、とても嬉しかったんです。自分の言葉で人を動かしたということが。だから、別に子供である必要はない。誰であっても、人の可能性を広げることができたら私は嬉しいのだと気付いたんです。
–ご自身も理解しきれていなかった市原さんの価値観の真髄に近づいてきた感じがしますね。
はい。くまさんに「子供に限らず、人の可能性を広げたい」という気付きを共有しました。すると、「今の市原さんの仕事でも、人の可能性を広げる要素はあるかもしれない。でも、仕事は人生の一部でしかないので、人生全体で自分がどんな生き方をしたいのか、一旦仕事抜きで考えることが大切です。」と言われました。
それで、6回目のコーチングは終了しました。
人も部品と思ってしまう「役に立つ病」

–これまで行ったり来たりしていた思考や葛藤が不思議と1つの方向に向かって収束している気がします。
はい。でも、当時は本当に考えがまとまらなくて。6回目のコーチングの後、通勤中に毎日考えていました。人って何だろう。可能性って何だろう。もう壮大過ぎてどうしよう(笑)
全然考えがまとまらない中で、昨日(このインタビューの前日)に7回目のセッションを迎えました。で、昨日のセッションで私のサボタージュ(*コーチング用語で、変化を恐れて自分を制限してしまう思考という意味)の正体と、本当に自分がやりたいことが見えた気がします。
–考えがまとまらずに臨んだセッション。セッション後にそれほどの大きな気づき。すごいですね。7回目のセッション内容を教えていただけますか?
まず、私のサボタージュは「役に立つ病」だとわかりました。これに気付いた過程を話すと…私の母が子供のことなど色々手伝いに来てくれます。ただ、最近私の妹に子供が生まれて、母が妹のお手伝いに行くことが増えたため、私のところにあまり手伝いにこれなくなりました。
母からは、私が在宅なのか、出勤なのか、夫のいる日、いない日など、スケジュールを共有しておいてほしいと言われています。
–その方がお母さまも手伝いに行くべき日を見極められるからですね。
はい。でも、夫がいないと母がわかっている日にも手伝いに来ない日が何回も続きました。「予定を共有しているのにどうしてきてくれないの!?と母にきつく当たってしまったことがありました。
妹の子供が小さいから、妹優先でいいと思っています。でも、こちらもまだ子供が小さいのでサポートを欲しています。予定表を共有しているのだから、ちょっと気にかけてほしいなと。ちょっと甘えもあるのですが。
その話をくまさんにしたときに、私のサボタージュは「役に立つ病」だと指摘されました。ある意味、自分の親もパーツの1つと思っているような。
–余裕がなかったり、必死な時は、親族もリソースの一部!と思ってしまう気持ち、わかる気がします。
くまさんのフィードバックを受けて、私は昔の嫌いな上司のことを思い出しました。嫌な言い方をしてくる人で、私を物のように扱う。自分のスケジュールだけを意識して、仕事を私に依頼する時に私の都合は一切考えずに「これ明日まで」とか言ってくる。
あ、私はあの嫌な上司と同じ思考回路をしている!と気付きました。母の都合は考えずに、当たり前のように母は来てくれるもの、手伝ってくれているものと思っている。
あんな上司と同じなんて嫌だな、と思いました。ただ、私の場合は育児という大事なことのために、子供を早く寝かせるためには母のサポートが必要で。きっと昔の上司にとっても仕事が大切で、だからきつい言い方になってしまうのかなとも思いました。
くまさんからも、「大事なもののために効率を重視するのかもね」と言われて、その上で「役に立つ病の話は一旦横に置いておきましょう」となりました。「市原さんがそういう風に考える思考の癖があるということだけ覚えておいてね」と。
–「役に立つ病」が良いか悪いかの評価をせずに、そういう思考の癖があると認識だけしておく、というのがポイントな気がしました。自分の思考の癖を知っておくと、今後大切な意思決定をする際にも意識できると思います。
「役に立つ病」の根源からやりたいことが見えた
–「役に立つ病」を認識した後はどのようにコーチングが進みましたか?
くまさんからは、「役に立たないものを切り捨てたくなる考え方の背景には、過去に効率的ではなかったことで、上手くいかなかった経験があるのではないですか?」と言われました。
そう言われて思い出したのが入社1年目の時のこと。長時間労働でいじめもありました。仕事内容は誰でもできる仕事。その時に私は、「自分が専門的な知識をつけたら、違う環境に行けるんじゃないか」って思ったんです。そう専門的な知識をつけたら良い環境に行ける。そう思わないとやっていけない過去がありました。
–傍から聞く分には「効率的でなかったから上手くいかなかった」という感じはしないです。しかし、くまさんの質問を聞いて思い出したのが、新人の頃のその辛い経験だったのですね。その昔の思い出が引き出されたことに、何か意味があるように感じます。
新人の頃の話をしたら、くまさんが「誰でもできる仕事ではなく、自分の存在意義が感じられる仕事、宏美さんが宏美さんであること、オンリーワンの存在であることを強く欲しているのではないか」と気づいてくれたんです。そこから、専門性を持ったスペシャリストになることがやりたいことなんだ!と気づくことができました。
そして、私は何をしている時にエネルギーが湧いてくるんだろう?と考えました。そうしたら、新しいことを調べて、誰かに提供したりすることだとわかりました。私はきっと、そういうことができるスペシャリストになりたいんだろうと思います。
あと、くまさんが「宏美さんはどこかで仕事は自分の時間ではないと思っていませんか?」と問いかけてくれました。確かにそうだなと。
だから、スペシャリストになる分野が、私自身が自分の時間と感じられるものだったら楽しいんじゃないかな?と思い始めました。 この辺りまで気づけて、昨日(インタビューを受けた前日)の7回目のセッションが終わりました。
「自分ごと」と思える分野で専門家になる

–8回目のセッションではくまさんとどんな話をしたいですか?
まず、子育てとの両立について、私の考え方に変化があったことを共有したいです。私は新卒の就活時から将来の子育てとの両立を重視していました。転勤がなく、ママさんが多く、家庭の都合で抜けても補充できる人がいる。そんな条件で今の会社と職種を選びました。
しかし、条件ばかりを気にしてきた結果、これまで仕事内容に満足できませんでした。だから、今後は条件に囚われずに、本当にやりたいことを考えようと思うようになりました。
–これまでのコーチング内容を伺っていても、子育てを非常に重視されている印象でした。そんな市原さんが、子育てとの両立という条件からチェックマークを外すのはとても意外です。
もちろん、子どものことで手を抜く気はないし、習い事の時間を減らすわけではありません。ただ、私が私で幸せになる道を選んだ方が、子どもも嬉しいんじゃないかと今は思います。
–素敵ですね。では、条件に囚われずに本当にやりたいことが何か見えてきましたか?
私は、流産や夫の海外赴任の可能性を通じて、「働きたくても働けないかもしれない」という危機感と正面から向き合う経験をしました。働き方に関して、会社の人事部や産業カウンセラーに相談したり、法律をや制度をたくさん調べました。
この経験を通じて、あらゆる状況でも健康に働ける方法に詳しくなりたいと思うようになりました。私が自分事と思える分野でもあります。必要とする人が制度を使いこなせるようにアドバイスしたり、寄り添いたいです。 そのために、社労士の資格取得にチャレンジしたいなと思っています。
表面上の結果は前から変わらないけど
–そういえば、3回目のコーチングで、尊敬する人として「SNSで見かけた社労士の先生」を挙げておられましたね。
そうなんです。もっと言うと、実はCoParentsの前に受けていたコーチングで、私のキャリアの方向性を分析した結果、社労士という選択肢は出ていました。あと、「制度に精通して、必要な人にアドバイスをしたい」という思いが今ありますが、前のコーチングでもリサーチ業務が合っているという話になったんです。
–以前から方向性の結論は出ていたのですね。
うーん、結果は同じだけど、違うんです。憧れているSNSの社労士の先生の事務所は、フルリモートで働けて、ママさんが多いところです。だから、以前に社労士という選択肢が出たときは、社労士だと今後の小1の壁のことを考えても、柔軟な働き方ができそうだから良いなと思っていました。
でも、それって「役に立つ病」なんです。くまさんが「宏美さんに役に立つ勤務条件かどうかで、職業選択を決めまくっていませんか?」と問いかけてくれたから気付きました。
過去10年くらい働いた中で、子育てしやすいという条件を重視した結果、満足できなかった。だから、仕事内容を重視したい。
私は流産や海外赴任帯同の取り消しに直面して、自身の働き方ととことん向き合いました。だから、私が興味を持っているのは「働き方」。働きやすいから社労士になるのではなく、働き方を扱う仕事をしたいから社労士になりたいです。
–以前と目指す方向性はほぼ同じですが、そのモチベーションが全然異なるわけですね。
はい。目標への腹落ち感も全然違います。
社労士の勉強を休職してできないか、会社の制度を模索しています。しかし、まずは今の仕事をしながら、社労士資格の勉強を始めようと思います。
あと、社労士の勉強計画は会社の評価シートには書きません!以前のように、上司に「今の仕事に関係ない」と一蹴されるだけでしょうから(笑)
わかるまで続けようと思った

–元々CoParentsのコーチングを始められたきっかけは、流産と海外赴任帯同の取り消しという公私に亘る荒波に太刀打ちできないからでしたよね。ここまでのコーチングを振り返って、始めた頃からどのような変化がありますか?
いやー、もう当時の自分からは想像できないくらい考え方が変わりました。特にここ数日は本当に心がすっきりしています。
–私もお話を伺っていて、このお話はこんな顛末を迎えるんだなと驚いています。ところで、最初の6回コースが終了したときに、メンテナンス3回コースを追加購入されたのって、コーチングの進捗がまだ途中という感じがあったからでしょうか?
そうですね。まだ6回終了時点だと、まだ何もまとまっていないなと思って続けました。でも、どれくらい続けたら見えてくるんだろうという不安はありました。私の考えがまとまらずに、ちょっとモヤモヤして終わった回があったのも事実です。
–「受けたけど答えが見えないし、やめよう」ではなく継続しようって思った理由はありますか?
もう少し続けたら自分の答えが見えるかも、という気持ちはありました。あと、逆にわかるまで続けてやる!という思いもありましたね。
私の場合、くまさんとのコーチングでは、毎回全然違う話をしていました。毎回セッションとセッションの間に起こった様々な出来事の振り返りからスタートするので、自然と全然違う話になる。ただ、最終的にくまさんが気づいたことを言ってくれるので、毎回なんかまとまってくるんですよね。
Beingは定まった。次はDoing。
–今後もコーチングを続けますか?
もうかなり答えが見えてきたので、追加購入した3回券(※インタビュー時点で残り2回)が終了したら、一旦卒業にする予定です。
社労士資格は難しいので、何年かかるかわかりません。でも、社労士資格に合格して次のステップの行くときに、いつかまたくまさんにお世話になりたいなと思っています。
–これまでのくまさんとのコーチングを活かして、今後どうしていきたいですか?
目指す方向は決まったので、それをどう実践していくかが課題です。具体的には勉強と仕事と子育てを両立するのか。資格取得のために休職できるならいつにするのか。2人目の子供を考える場合、どういうプランニングでいくのか。
あと、社労士は何年かかっても取りたいのですが、一方では長女が小学校に上がる前に働き方を変えておきたい気持ちもあります。社労士資格の取得がそれまでに間に合うのか?という問題もあるので、全体的にタイムラインをどうするかが次の課題です。
–市原さんの在り方(Being)はもう見えたようですね。次回のコーチングで、実践部分(Doing)について少しくまさんと話せるとよいですね。市原さん、本日はお話を聞かせて頂き、ありがとうございました!
おわりに
予定されていたもののすべてが手からこぼれ落ち、立ち尽くしていた市原さん。再び歩き出せたのは、「自分が本当にどうありたいか」を見つけられたからです。
人生が100%思い通り進むことは少ないでしょう。女性で子供がいると尚更です。常に望む結果が得られない中でも、自分の心を満たしていくには、環境に応じて柔軟に立ち振る舞いを工夫しつつも、自分のコアをぶれないように保つことが大切です。
市原さんがコーチングを通じて取り組んだのは、自分のコアが何かを徹底的に理解することでした。どうかこの先、どんな時も市原さんが自分のコアを大切に歩んで行かれることを心から願っています。
この記事を読んで、CoParentsのコーチングに興味を持たれた方は、ぜひ体験コーチングをお試しください。
市原宏美さん(仮名)
金融機関勤務の35歳。3歳の娘さんがいる。

隈部 敦子 (木村さん担当コーチ)
CTIジャパン/米国CTI認定プロフェッショナルコーチ(CPCC)
大学卒業後、大手総合食品メーカーで20数年勤務。事業企画・マーケティング・賞伝部門に従事。
プライベートでは高校2年の息子、中学1年の娘と忙しくもにぎやかな毎日を過ごしている。
コーチングとの出会いは子育ての悩みから。仕事・子育てにいっぱいいっぱいですべてが中途半端・・・
一体何のために生きているんだろうという中でコーチングを体験し、人生が大きく変わったと感じている。
