多くの人が自分らしく生きたいと願っています。しかし、自分らしく生きるのは難しいものです。とあるカナダのソフトウェア企業の経営幹部はBBCニュースのインタビューでこのように話しています。
“The advice ‘be yourself’- that’s starting in the middle. How can you be yourself if you don’t know yourself?” he says. “Get to know yourself and find out what makes you happy.”
引用元:BBC
(訳:自分らしく生きるというアドバイスは、それ単体だと不完全です。自分をわかっていないのに、どうやって自分らしく生きられるのでしょうか?まずは自分を知り、何が自分の幸せかを理解すべきです。自分らしく生きるのはその次です。)
※訳は筆者が記事の文脈を考慮して作成
山川理絵さん(36歳・仮名)は、転職活動の際にCoParentsのコーチングを受けて、順調に自己理解を深めていました。しかし、山川さんは転職活動で大きな迷いに対峙します。
自分らしく生きるために、山川さんはどのように迷いを乗り越え、どのように自分らしい転職を実現したかを伺いました。転職活動に悩んでいる全ての方に読んでいただきたいです。
また、山川さんはプライベートでは6歳の息子さんを育てるお母さんです。キャリアや家庭に忙しいワーママでモヤモヤを抱えている方がいたら、この記事が「自分らしく生きる」ことについて考えるきっかけになればと思います。
(山川さんへのインタビュー全3回の2回目です。)
※聞き手・古村千尋/CoParents代表
自分らしく生きたいのに:内定辞退をした自分にモヤモヤ
–「自分らしく生きる」というのが転職活動でのテーマであり、課題だったようですね。詳しく教えていただけますか?
転職活動を始めた頃は自己理解の不足が課題でした。しかし、これまでのコーチングのおかげで自分の本心への理解は深まっていました。
一方で自分自身の選択に戸惑いを覚えていました。当時は1社内定を頂いていましたが、何となく決断することができずに辞退してしまったんです。でもそのことにずっとモヤモヤしていました。後悔とは別の感情で自分でも混乱していました。
そこで新しく担当コーチになったあずさん(小林梓沙コーチ)に、気持ちの整理をしたいと伝えました。
※山川さんは、とても前向きな理由で担当コーチを松本裕太コーチから小林梓沙コーチに変更されました。詳しくはインタビュー第3回で!
–自分自身への理解が深まっていたからこそ、内定辞退は本心とは違うのではないかという違和感をキャッチできたのかもしれませんね。小林梓沙コーチとの初回セッションはいかがでしたか?
転職活動の現状をざっくばらんに聞いてもらいました。内定辞退のことも含めて、自分でも転職活動をどうしたらよいかわからなくなっていました。いっぱいに溜まっていたそんな気持ちを全部吐き出して聞いてもらいました。
すると、
自分自身の価値観や大切にしているものを明確にしていきましょう
とお話がありました。自分が納得できる意思決定の仕方を見つけることをゴールにして、今後のコーチングの方向性を決めました。
これまでは月1回の頻度でセッションを受講していましたが、そこからは10日に1回のペースで詰めて受講しました。
解説:内定辞退した時の話をしている理絵さんは、自分らしさを完全に見失っているように見えました。理絵さんからご自身の想いと異なる声がたくさん聞こえたんです。そこで、本来の自分を取り戻し、自分らしい選択をしてもらうために、このような提案をしました。
自分らしく生きるためのブートキャンプスタート
–転職活動で納得のいく、自分らしい選択をするんだという、山川さんの本気が伺えます。それでは10日に1回のコーチングブートキャンプ(笑)の様子を聞かせて下さい。
お互いを良く知った方が話をしやすいですよね
というお話があり、お互いの自己紹介をたっぷり15分ずつかけてやりました。
自分のことをこんなに長く話すことはないので、15分も話せない!と最初は思いました。でも、話し出すと意外と喋ることがたくさんあって、15分間しっかりと自身について話せました。
この自己紹介のおかげであずさんと本音で話せる信頼関係の土壌を作れたと思います。
–本音でコーチと話し合えるようになったその次のセッションの内容が気になります。
その次のセッションでは、短いお話を聞いて関連する質問に答えるというプログラムをやりました。このプログラムを通して、私が実現したい社会の姿や価値観について2つのことがわかりました。
プログラムでの気づき
・ 私はそれぞれの人が自分らしい選択ができるということを大切にしたいと思っていること
・ そのためにはいらないモノを捨てるプロセスが大事だと考えていること
それまでのコーチングは、過去からの自分の蓄積に注目して自己内省を行うことが多かったです。でもこのセッションでは、過去の自分を大切にしながら、自分が今後どうなりたいかを考えました。
やったことは自己内省ではあったのですが、私の目線を未来に向けてもらえた回でした。転職活動で自分の未来について意思決定していく上でとても示唆があるセッションでした。
解説:ここで行ったのは「人生の目的」を探求するワークです。目的には到達点というイメージがありますよね。しかし、ここでは人生の目的を「自分らしく生きる道」、つまり歩んでいくものと捉えています。理絵さんが自信を持って次の会社を選択するためには、これからの人生をどう歩みたいかを見つめることが大事だと感じたので、このワークを提案しました。
私は実際に聞いたお話と質問、理絵さんの回答の一部を教えていただきました。お話の内容が具体的だったので、価値観という抽象的なテーマでも、とりとめのない感じではありませんでした。回答の裏に潜む価値観を類推によって炙り出しているのが興味深かったです。
真面目に取り組んで勝ち得た自分らしい生き方
–さて、このセッションの後に、理絵さんは自分らしい意思決定ができたと聞いています。詳しく教えて下さい。
このセッションの最後に、あずさんから宿題が出ました。
日々の小さな選択の中でも自分らしい選択を心がけてください。そして、それぞれの選択の理由や感じたことを意識してください。
いざ意識してみると、日々の小さな選択の際にも自分の心が動くことに気づきました。選択のたびに感じる小さな心の動きを紙に書き留め、選択の理由を都度考えることを繰り返しました。そして、「自分らしい選択って何だろう」と自問自答を続けました。
解説:私たちが普段の生活の中で行う“選択”は無数にあるので、“選択をしている”ことに無意識になりがちです。しかし、“選択“する時には必ず自分の価値観が表れます。そのため、選択する自分を通して価値観や大切にしていることに気付くことができます。
理絵さんは先述のワークを通じて、”それぞれの人が自分らしい選択ができる”ことが人生の目的だと気づきました。そんな理絵さんに、自分の価値観に沿って自分らしい選択ができる時、そうでない時、それぞれで自分に何が起きるのかを理絵さんにぜひ体感してほしい、との思いでこの宿題を出しました。
–自分らしく生きるためには努力が必要だと考えさせられます。選択の際の「心の動き」とはどういうことでしょうか?
私の場合はあるべき論に阻まれることが多かったです。良い子であることを意識しすぎて、選択しようとしているものが少し世間とずれていると止めようとする心の動きがありました。
あずさんは私が世間体に囚われがちなことをもう見抜いていたと思います。この宿題を出すときに、
もし選択するときに自分を止めるような心の動きがあれば、「大丈夫。人と違っていてもいいんだよ」と自分に声をかけてみてください。
と言ってくれました。
あずさんの励ましも意識しながら宿題をしていると、あるべき論を過剰に意識する自分をどんどん脱ぎ捨てることができました。
自分らしい人生を生きたい、心に正直に、と思っていても、日々の生活の中での自分を縛っている義務感や「こうあるべき」という考えを脱ぎ捨てるのは簡単ではありません。一人ではここまであるべき論と戦えなかったと思います。
「自分らしい選択をするためには、いらない物を捨てるプロセスが大切」との気づきを実践されているように思います。理絵さんの場合はあるべき論がいらないものだったかもしれませんね。
–「あるべき論」が理絵さんの選択を止めようとした事例を教えていただけますか?
「自分らしい選択とは何か」を知るために、宿題をする以外にも意識的に普段話をしない人と話すことを心がけました。その時に、昔の恩師と久々に話したいと思いました。私は大学卒業まで毎週ピアノのレッスンに通っていて、プライベートでも先生を尊敬していました。ただ、レッスンに行かなくなってからは疎遠になっていました。
何年も連絡していなかったのに、いきなり電話するなんて失礼じゃないかと思って、やっぱり辞めておこうとも思いました。でも、あずさんの言葉の通り、「大丈夫。人と違っていてもいいんだよ」と自分に言い聞かせて、思い切って恩師に電話をかけることにしました。
–「自分らしく生きる」を実現するために、本当に真面目に取り組まれたんですね。そのピアノの先生とはお話できましたか?
思い切って電話して大正解でした。先生はもう70代なのですが、ピアノのキャリアと子育ての両立をする中でどう考えてきたのかを伺いました。その先生との会話で、これまでのコーチングで薄っすら見えかけていた自分らしい選択とは何かの答えが出ました。
–理絵さんにとっての「自分らしい選択」とは何だったのでしょうか?
「家族を大切にするために、私はどうありたいか」という基準に沿って選択をすれば、それが自分らしい選択になると気づきました。
恩師と話したときに
あなたはやっぱり家族を何よりも大切に思っているのよ。家族と仕事のバランスで悩んでいるじゃない?
と言われました。あぁ、先生はやっぱり私のことをよくわかっているなと思いました。
初回のゆうたさんとのセッションで15年後の自分を思い浮かべた時に家族と過ごす自分を思い浮かべました。その後もコーチングを継続したことで、私の選択基準は家族を大切にできるかどうかだと薄々気づいてはいたと思います。最後に恩師の言葉で確信しました。
コーチングや恩師との会話を経て、自身の価値観を確信し、私は転職を決めました。一度内定を断っていた会社にもう1回連絡したんです。
–自分らしい決断をされたんですね。内定を断った会社にもう一度連絡するに至った心境の変化を教えてください。
内定辞退をしたのは、あるべき論に囚われていたからだったと気づきました。やはり大企業で頑張り続けることが社会的にあるべき姿なのではないかという思いがどこかにあったと思います。
また、家族がいて住宅ローンだってあります。だから安定した企業で勤めるべきだとも思っていましたし、転職して本当に良いのかと必要以上に不安に思っている自分がいました。
でも大企業勤めを辞めたところで、実際問題困らないんですよね。今の時代、大企業が安定とも限りません。それに、もし会社が潰れたら社会保険が効いている間にまた転職活動すればいいわけです。
良く考えたら、別に大企業に勤めるために大学に行ったわけではありません。それなのに、いわゆる昔ながらの、「良い大学を出て、世間一般で良いとされる大企業に入る」という良い子モデルからなかなか脱却できずにいました。
でも、私が求めている安定は現職を続けることでは得られないと気づき、あるべき論から抜け出すことができました。
–理絵さんの求める安定とは何でしょうか?
自分の心の状態が安定していることです。私は結構自分に厳しいタイプです。そのため、自分のメンタルが落ち着いてさえいえれば、どこにいたって仕事をコツコツと頑張れるんです。でも今の会社では、仕事内容以外でのたくさんのストレスがあって、全然心が安定しないんです。この状態で続けたら私は潰れてしまうと思いました。
「家族を大切にするために、私はどうありたいか」という基準に照らしたとき、私の心が不安定なままで家族を大切にできるでしょうか。私の心が安定しない職場で働き続けるべきでしょうか。答えは明白でした。
–内定を辞退した先とはどのような話をしましたか?
内定を断った企業からは、「もう一度検討してもらえるなら連絡してください。」と言われていました。
「家族を大切にするために、私はどうありたいか」という基準で、もう一度内定先について考えてみました。最近だと、子供がいるからできる仕事に制限がかかってモヤモヤする、という悩みを抱えているワーママも多いと思いますが、私の思いは少し違います。一方で、家族を大切にしたいから仕事量を減らしたい、仕事はどうでもいいということでもありません。家族を大切にできる限りにおいて仕事をきっちりやりたい、というのが私の思いです。
断った内定先は在宅勤務など働き方の面で、私の思いを実現できる環境を整えてくれていたこともあり、もう1回話がしたいと思いました。
でも、連絡していいと言われていたとはいえ、1回内定を辞退しておいてまた連絡するのは失礼かなと思いました。以前の自分なら絶対連絡していなかったと思います。でも、良い子であろうとするのはもうやめようと思い、勇気を出してその会社に連絡を取りました。ありがたいことにもう1度お話を聞いていただけることになりました。
–自分らしく生きておられる姿が本当にかっこいいです。内定を辞退した企業との面談はいかがでしたか?
面談では企業の目指すビジョンや社員の方々に強く惹かれていたのに、家族も私自身も不安に思う部分があり、辞退してしまったことを正直に話しました。そして、考え抜いた結果、家族を大切にしながら仕事もしっかりやりたいと伝えました。
すると、
何も話さずに辞退するのではなく、何で悩んでいるかも含めて話してほしかったです。悩んでいる点についても情報提供できたかもしれません。これからも一人で抱え込まずに相談してほしいです。
と言われ、改めて内定を頂くことができました。
–素の自分を見せて、自分らしい意思決定ができたんですね。転職の決定、おめでとうございます!自分らしい生き方を身につけられた今の理絵さんは本当に素敵です。
ありがとうございます。コーチングと恩師の言葉のおかげで、「家族を大切にするために、私はどうあるべきか」という自分らしい選択の在り方に気づけました。そして、コーチングで目線を過去から未来に向けてもらえました。そのおかげで、自信を持って転職先を選ぶことができました。
良いタイミングで良いサービスに出会えて、本当に良かったと思います。このインタビューはブログ記事になるんですよね。人生変わったと書いてもらっていいです。逆に怪しく聞こえないか心配ですが(笑)、本当にそう思っています。
自分らしく生きるために体系的な努力を
山川さんは世間体から脱却して、「家族を大切にするために、私はどうあるべきか」という自分らしい選択の在り方に気づきました。そして、一度は内定を辞退した会社への転職を決意されました。
山川さんを見ていると、日々漫然と過ごしているだけでは自分らしく生きられないのだと考えさせられます。山川さんはコーチングを真摯に受けただけではありません。コーチングを受けている以外の時間でも、自分らしい選択をするために、日々意識して行動し、気づきをメモに書き留めて考え抜いていました。きちんと時間を取って努力して初めて自分らしく生きることが可能になるのかもしれません。
最後は真面目が勝つんです(笑)
とはいえ、自分らしく生きるために何を努力すべきか、自力で思いつくことは難しいです。
CoParentsではコーチングを通じて、親である方が自分らしく生きるお手伝いをしています。国際コーチング連盟認定スクールでトレーニングをしたコーチが、お一人お一人の課題や状況に合わせて、必要なコーチングを提供します。お気軽に体験コーチングをお試しください。
山川理絵さん(仮名)
36歳。地方都市在住。配偶者と6歳の息子と暮らす。現在は大企業で経理に従事。転職活動を経て、年明けよりスタートアップ企業でリモート勤務を開始予定。CoParentsにてコーチングを継続中。1回目のインタビューはこちら。
小林 梓沙(山川さん担当コーチ)
CTIジャパン/米国CTI認定プロフェッショナルコーチ(CPCC)
国際コーチング運盟ICF認定アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)
大学卒業後、日系大手総合化学メーカーに就職。11年勤務した後、米国へMBA留学(2年間)。留学中にコーチングに出会い、留学中の心身共に最も辛かった時期を上手く乗り越えられた経験から、コーチングに興味を持つ。ついつい話してしまうような、ユーモアや笑いのある楽しく明るい雰囲気のコーチングが定評。