転職活動の鍵を握るとも言える自己分析。仕事に子育てに家事に忙しく、ゆっくり自分を振り返る時間を取りにくいワーママには難しいものです。
また、自分より子供やパートナーを優先して生きているワーママも多いと思います。そんな方は改めて自分にベクトルを向け、「自分の」ビジョンや価値観について掘り下げるのが難しいかもしれません。
山川理絵さん(36歳・仮名)は、転職活動の際にCoParentsのコーチングを受けられました。山川さんが初めてコーチングを受けた時は転職活動前でした。しかし、初回のセッションでコーチングが自己分析に役立つと実感され、転職活動開始後に再びコーチングを受けられました。
今回は山川さんがコーチングを通して転職活動でどのように自己分析をされたのかを伺いました。山川さんはプライベートでは6歳の息子さんを育てるお母さんです。ワーママならではの自己分析ポイントも伺いました。是非ご覧ください。
(山川さんへのインタビュー全3回の1回目です。)
※聞き手・古村千尋/CoParents代表
転職活動前に自己分析してみた結果
–転職活動を始める前に初めてコーチングを受けて下さいましたよね。その時の様子を教えて下さい。
当時は特定の悩みはなく、お試し感覚で受けました。
その日はコーチの問いかけに答えながら、自分とはどんな人なのか、自分はどんなことを考えているのかを深堀しました。思い返すと、新卒の就職活動の時、自分のことを話すのは苦手でした。そして10年以上経った今も、やっぱり上手く話せないなと改めて感じました。
印象的だったのは、担当コーチのゆうたさんから
15年後の自分を想像してください。どんな姿を思い浮かべますか?
と質問されたときです。将来の自分の姿を話すなんて恥ずかしいですし、私にとっては答えの言語化が難しい質問でした。
でも、ゆうたさんの話し方や導き方が上手だったので、素直に思っていることを話せて、少しずつ考えがクリアになっていきました。
解説:現実をベースに未来を考えると、現実にある制約に 目が行きがちです。一旦引いて考えることで、現実に囚われることなく、自分の本当の夢や目標を具体的に考えやすくなります。
–理絵さんの思い浮かべる15年後の自分はどんな姿だったのでしょうか?
家族と一緒に過ごしている自分を想像しました。そこに仕事要素はゼロでした。
普段は割と仕事のことばかり考えているので、15年後を思い浮かべた時に仕事要素が一切出てこないのは驚きでした。1日の起きている時間が16時間として、そのうち9~10時間は通勤と会社での時間です。帰宅後も、翌日仕事でやらないといけないことが頭の中をぐるぐるしていることも多いです。
私にとって家族が大切な存在なのは前からわかっていました。でも、日々仕事で忙殺される中で、そのことを見失ってしまうことも多いんです。そんな中、私の心の真ん中にあるのは家族なのだと再確認できたことに意義がありました。
転職活動をスタートー履歴書を見て愕然
–転職活動を始めてから再度コーチングを受けたのはなぜですか?
当時の転職活動の進捗は、書類選考を10社弱出して、通ったり通らなかったりという感じでした。
ある日、改めて自分で書いた履歴書を読んで衝撃を受けました。この履歴書から山川理絵という人間は1ミリも想像できないと思ったんです。履歴書に書いてあることは確かに私の一部分なのですが、私の大部分は書かれていないように感じました。夫にも見せたのですが、「この履歴書から君の姿は出てこないね」と言われました。
そもそも転職活動を始めたのは今の会社への手詰まり感からでした。私は真面目な性格なので、多少不満に思うことがあっても、「まだ頑張れるんじゃないか」と考えて、結局転職しない可能性もある気がしていました。
ただ、現職に留まるにしても、転職するにしても、しっかりした理由を持ちたいと思いました。そうでないとモヤモヤしたままズルズル歳を取ってしまうという怖さがありました。
だから自分の軸をしっかり認識して、言語化しておきたい。転職活動においても、自分についてより伝わる表現ができるようになりたいと思いました。初回のコーチングで自分について深く考えられたことを思い出し、再び受けることを決めました。
–本質的な自己分析は転職活動時のアピールのみならず、意思決定の判断軸にもなりますね。再び受けたコーチングはいかがでしたか?
転職活動を始めたことを担当コーチのゆうたさんに話しました。そして、自分自身の軸を自分で理解しきれていない状態に陥っていることを相談しました。この状態で転職活動を進めても上手くいかないだろうという不安、そして、もっと自分を知って表現できるようになりたいと伝えました。
そんな私のニーズをベースにその日のプログラムを組んでもらいました。その日は自分自身を構成する要素に名前を付けました。具体的には「直観」「もやっと」「へりくつ」みたいな感じで、過去のエピソードから自分自身を強く印象付けるワードをいくつか選び出しました。
解説:これは”Name it”というアプローチです。自分自身を構成する要素それぞれに名前をつけることで、今の自分にはどの要素が前面に出ているのかを自覚できます。また、このように自分の現状を認識した上で、「ちょっと○○の要素に出てもらおう」と自分の在り方を選択しやすくなります。
–2回目のセッションで、転職活動に役立つ気づきや、自己分析の深まりはありましたか?
転職活動だけに役立つというより、今後自分が生きる上で大事な留意点に気づけました。それは言葉ではなく、顔や表情に出るものこそが自分の内面を映し出しているということです。
セッション中にゆうたさんから、
心の内面がすごく表情に出ていますね
と指摘されました。
コーチングでは、コーチから色々な質問を受けます。その日は、昔の特定の出来事について当時どんな感情だったのか、この先どうしたいかなどを聞かれました。そして質問に答える時の表情についてコーチからフィードバックを受けるんです。
例えば、もやっとした気持ちで話している時は、無意識のうちに肘をついたり、伏し目がちになってたようです。逆に、直感で「これだ!」と決めて行動した話をする際には、目に力が宿ってまっすぐ一点を見つめて進んでいくような表情になっていると言われました。もともと顔に出るタイプだという自覚はありましたが、ここまではっきり出ているとは自分でも驚きでした。
解説:言葉はいくらでも作れますが、表情や雰囲気を作り出すことは難しいです。コーチは、その人が醸し出すあらゆるものから心の奥底にある本音を探します。
–自己分析の本質をついている気がします。言語だけの自己分析には限界がありそうですね。
自分について言葉で表現しようとしても、自分が理解している言葉しか出てきません。でも自分が理解している言葉だけでは自分を十分に表現することはできません。
それに、言葉で語っていることは、あるべき論であって本心でないこともあります。言葉って頭で考えて外に出すものなので、自分の言葉が本心なのかは自分でも見分けるのが難しいと思います。
一方で、表情に出るものは間違いなく本心です。ただ、私の表情を第三者に客観的に見てもらって初めて気づくものなので、一人で自己分析をして本当の自分を知るのは相当難しいと感じました。こうしてプロと話してフィードバックをもらうのが1番良い自己分析のやり方ではないでしょうか。
転職時の自己分析でワーママに大切なこと
–山川さんが考える転職活動時の自己分析のポイントとは何でしょうか。
仕事以外の場面での自分を知ることが大切だと思います。転職・就職活動をする際、どうしても仕事上での強みを前面に出しがちです。しかし、仕事以外のプライベートな部分も含めた自分の価値観についても理解して、面接で伝えないとミスマッチが起こると思います。
例えば、私の仕事での強みは、「自分に厳しく、成果にこだわりながら、きっちりと着実に業務を遂行する」という点です。しかし、その点だけを面接で強調してしまうと、「この人は真面目に一生懸命たくさん働いてくれそう」という印象だけを与えてしまいます。その結果、家族も大切に思っているのに、仕事にフルコミットすることを求められる職場を選んでしまうということになりかねません。
–ワーママが転職活動をする際にとても大事なポイントですね。
自己分析で仕事以外の点も考えることは、希望のワークライフバランスの実現のみならず、より包括的な自己PRにも繋がると思います。
私は新卒時の就活では、あまり深く考えることもなく、総合職で就職しました。子育てなど、時間的な制約が何もなかったので、当たり前かもしれませんね。でも、新卒時のマインドセットのままだと、転職活動時の自己分析でも仕事の面のみにフォーカスしてしまうと思います。
仕事以外で得たものも回りまわって仕事の強みになると思います。私の場合、家庭での過ごし方や子供との接し方を通して得たものが、後輩への声掛けや他部署との調整に活きています。この意味でも、仕事以外の自分についても分析して言語化し、転職希望先に理解してもらった方がミスマッチを防げると思います。
本質的な自己分析が人生を豊かにする
今回は山川さんがコーチングを活用して、自己分析をしたお話を伺いました。自己分析について、山川さんは主に以下の2点を強調されていました。
自己分析のポイント
- 言葉ではなく表情に出るものが本当の自分であること
- 仕事以外の自分を知ることが大事であること
自己分析は転職活動をする上で必須のタスクです。しかし、転職活動に関係なく自分を振り返り、自身の価値観や優先順位について理解を深めることは大事です。日頃から本質的な自己分析ができていれば、キャリアに関して納得のできる選択をしやすくなります。また、子育てやパートナーとの関係で問題が生じた時も、自身の判断軸を持てていれば問題と向き合いやすくなります。
また、自己分析は継続して行うことも大切です。キャリア行動の理論の1つに、キャリアの選択行動は生涯に亘って繰り返される選択と適応の連鎖の過程である1という考え方があります。
時間の経過に応じて自分自身は変化していきます。自身の変化に合わせて仕事、働き方、ライフスタイルを選択し直さないと、現状と自分のミスマッチが起きて、日々モヤモヤを抱えて過ごすことになりかねません。山川さんが新卒時のマインドセットのままでいることに警鐘を鳴らされていたこととも整合的な考え方です。そのため、その時々の自分自身についての解像度を上げておくことは重要です。
CoParentsではコーチングを通じて、親である方が自分らしく生きるお手伝いをしています。山川さんのような本質的な自己分析もコーチがサポートします。転職活動をする・しないに関わらず、お気軽に体験コーチングをお試しください。
さて、この後山川さんは転職活動で深く迷うことになります。次回の記事も乞うご期待です。
- キャリアカウンセリング入門 (ナカニシヤ出版・渡辺三枝子+E.L.ハー著 2001年) ↩︎
山川 理絵さん(仮名)
36歳。地方都市在住。配偶者と6歳の息子と暮らす。現在は大企業で経理に従事。転職活動を経て、年明けよりスタートアップ企業でリモート勤務を開始予定。CoParentsにてコーチングを継続中。2回目のインタビューはこちら。
松本 裕太(当時の山川さん担当コーチ)
大学卒業後、日系大手化学メーカーにて、財務・事業企画・営業を経験し、15年間勤務。2023年9月ライフコーチとして独立。
適応障害や不妊治療を経験し、約10年間一人で問題を抱える日々を過ごす中で、パートナーにも言えないようなパーソナルな問題を誰かに聞いてもらうことの重要性や共に未来を考えてくれる人の有難さを痛感し、コーチングを待っている人がたくさん居るはずだ!との想いから、2021年コーチングの勉強を開始。
そして、子供の成長と向き合い、子供の未来を願う中で、「自分は親としてどんな存在で居たいのだろうか」「背中で語れる父になれているのだろうか」と、自分自身の在り方やこれからの人生を見つめ直した結果、独立という道を選んだ。
国際コーチング連盟(ICF)認定コーチングスクールのCTIジャパンにおいて、100時間超のコーチングトレーニングを修了。現在、コーチングを提供すると同時に、プロフェッショナルコーチ養成コースにて研鑽を積む。2023年にライフコーチとして独立し、コーチングはもちろんのこと、パパママ向けワークショップファシリテーター等々、多方面に活動中。