【イベントレポート】コーチングを受けたのに、うつになった。それでも私がコーチになった理由

「コーチングを受けていたのに、うつになった。」

そんな経験を語ってくれたのは、CoParents所属の磯山江梨コーチ(えりさん)です。

えりさんはIT企業で広報や人事として15年以上勤務し、育休明けにうつを経験。今は会社員の仕事と並行して、CoParentsのプロコーチとして、仕事と子育ての両立や今後のキャリアなどに悩むワーママに伴走しています。

なぜコーチングを受けていたのにうつになったのか。そして、コーチングにまつわるネガティブな経験を経て、なぜコーチになることを選んだのか。えりさんが包み隠さず話してくださいました。

2026年3月10日に開催されたCoParentsのオンラインイベントのレポートです。コーチングとはどういうものなのか、赤裸々なところまで知りたい方におすすめの記事です。ぜひお読み下さい。


【登壇者プロフィール】

ゲスト:磯山 江梨(いそやま えり)

CoParents所属プロコーチ。IT系メガベンチャーにて約15年、広報と人事(キャリア支援・ダイバーシティ・研修など)を担当。育休明けにうつを経験し、休職。その後コーチングを学び、現在は会社員と個人向けコーチングの二足のわらじで活動。小学2年生男子の母。趣味はBTSとHANA。

ワーママ向けコーチングCoParents代表 古村千尋

モデレーター:古村 千尋(こむら ちひろ)

CoParents代表。政府系金融機関、国際機関、エネルギー分野のベンチャー企業の勤務を経て、Wharton MBAに進学・卒業。4歳息子の母。

目次

変化があまりにも大きすぎた——うつになった経緯

古村: えりさんは、育休明けにうつを経験されたと聞いています。その経緯を教えてもらえますか?

えり: 私は30歳で今の会社に入って、結婚と流産を経て、37歳で出産しました。1年弱の産休・育休を経て復帰して、そこから1年半ほど仕事と子育ての両立を続けていました。

しかし、ある日プツっと限界を超えた瞬間が来ました。病院でうつの診断を受けて休職しました。コロナ禍になってしまったこともあり、結果的に1年くらい休職して復帰した、という経緯です。

古村: なぜうつになったのか、今振り返って思う理由はありますか?

えり: お医者さんには、「変化があまりにも大きすぎた」と言われました。変化は大きく2つですね。1つは私個人の生活の変化。家事は99%私が担っていて、夫はコロナ前でほぼ出社だったので、朝の送り以外は実質ワンオペで子育てと仕事を両立していました。1日が2回あるみたいな感じで、本当に自分の時間がなかったですね。

もう1つは仕事の変化です。1年休んでいる間に会社が急成長して、上司もメンバーも仕事のやり方もすっかり変わっていました。復帰後は、まるで転職したみたいな感じでした。しかも、私が1人でやっていた仕事が、戻ったらチーム体制になっていて、私だけ「1人で回していた伝説の人」みたいになってしまって(笑)。結局私は育休明けも1人で業務をやる感じになり、育児で飲みにケーションもできず、孤独でした

辛いと思ってはいけない——感情への蓋が、限界を隠した

古村: 聞いているだけでも辛そうな状況です…

えり: でも、当時は辛いと感じることができていなかったんです。「辛いと思ってはいけない」という強い思い込みがありました。

私は3人きょうだいの長女で、子どもの頃から我慢していました。あと物心ついた頃からぼんやりと「なんで死んじゃいけないんだろう」って思っていたんですよ。死にたいというわけじゃなくて、哲学的な疑問として鬱々と考えていた感じなんですが、「親が悲しむから、これは言っちゃいけないんだろうな」ってずっと思っていて。そうやって、本音を出さないことが癖になっていたんだと思います。

古村: 自分の気持ちを口にすることへのブレーキが、子どもの頃からあったんですね。

えり: 嫌われたくないから、暗いことは特に。で、うつの当時は「自分はこんなに恵まれているのに、贅沢を言ってはいけない」という気持ちがさらに強くなっていました。仕事があって、結婚もできて、子どもにも恵まれて。周りにはもっと大変そうな同僚もいたし、自分のしんどさなんて大したことないって、ずっと感情に蓋をしていたんですよね。

古村: 「恵まれている自分が弱音を吐いてはいけない」という感覚が積み重なっていったんですね。CoParentsにいらっしゃるワーママさんにも非常に多いと思います。

えり:それで、気づいた時にはもうひどい状態になっていた、という感じで。ずっと私は感情に蓋をし続けていたんです。

コーチングを受けていたのに、なぜ機能しなかったのか

古村: 実は私、えりさんがうつになった当時、コーチングを受けられる環境にいたと聞いていて、ちょっとドキッとしているんですが(笑)。コーチング提供会社を経営しているものとして、なぜコーチングが機能しなかったのか、ぜひ聞かせてください。

えり: 理由は2つあると思っています。ひとつは、コーチングに対する私の思い込みです。私はビジネスの文脈でコーチングに出会うことが多かったので、「崇高な目標や成果を求めないと受けてはいけない」という先入観がありました。立派なテーマを持って行かなければいけない、そんなに達成したい目標もないのに受けちゃいけない、って。

古村: それはすごくよく分かります。コーチングを提供する側の立場として発言すると、ビジネス文脈のコーチングの方が売りやすいんですよね。年収が上がったとか、華々しい転職をしたとか、Before/Afterをわかりやすく語れます。それに、ビジネスパーソンは収入が高いから、高単価に設定できる。だから目立つコーチングはビジネス寄りばかりになってしまう

えり: それはありますよね。そして、もうひとつの理由は、当時コーチングをしてくれていたのが社内の同僚だったこと。「こんな重い話をしに行くのは迷惑じゃないか」という気持ちが邪魔をして、本当のことが言えなかったんです。結局、出しきれない部分があった。それがコーチングが機能しなかった一番の理由だったと思います。

逃げたくて学び始めたコーチング

古村: えりさんはコーチングについて、そんな苦い経験があったにもかかわらず、今度はお金を払ってコーチングを学ぶ側に回ったわけじゃないですか。なんでそこまでして、コーチングを勉強しようと思ったんですか?

えり: きっかけは、息子のママ友がコーチングスクールのトレーナーだったというご縁です。でも動機は正直に言うと……うつ休職からの復帰後も、仕事があまりにも辛くて、逃げ出したかったんです(笑)。コーチになりたいとか、人のためになりたいとか、そういう崇高な理由じゃなくて、自分の救済のために、生きづらさを何とかしたくて学び始めました

古村: 誰かほかの人を幸せにする、というより自分のために、というのがえりさんのコーチングの出発点だったんですね。

えり: そうです。休職から復帰して1年ほど経っていましたが、体は回復しているのに、なぜ自分がうつになったのかも、どうすれば再発を防げるのかも、何も解消されないまま戻ってきた感じで。そこから抜け出したくて、コーチングを学び始めました。

古村: コーチングを学び始めてみてどうでしたか?

えり: 最初は全然楽しくなかったです(笑)。周りの同期がみんな優秀で劣等感ばかりで。でも3日間の基礎コースで1つだけ良かったことがありました。

休んでいる間に人と話すことがとても怖くなっていたんですが、コーチングの練習で、相手にただ好奇心を向けるだけでいいんだと気づいたんです。泣くほど嬉しくて、私にはまだ人への好奇心が残っているから大丈夫だと思えたことが、続ける理由になりました。

その後、コーチングの実践と学びを重ねていく過程で、「私が子どもの時に、こんなふうに話を聴いて欲しかったな」と気づきました。子どもや、その周りの人のコーチになりたいという夢ができて、資格を取って、プロコーチになりました。

自分の気持ちに向き合いたい人に、コーチングを受けてほしい

古村: ご自身の経験を踏まえて、どんな人にコーチングを受けてほしいと思いますか?

えり: 誰にでも必要だと思っています。特に「自分の人生を生きたい人」「自分の気持ちに向き合ってみたい人」に受けてほしいですね。目標とか決まっていなくていい。なんとなく、今の生き方をごまかしながら生きていくのはいやだな、と感じている人こそ、ぜひ来てほしいです。

古村: 「コーチングは意識の高い人向けのもの」というイメージを持っている人も多いですよね。

えり: そうなんです。でも全然そんなことはなくて。コーチングって贅沢品みたいに見られているところがあるせいで、意識の高い人向けみたいになっている気がします。そんなことないんですけどね。目標云々ではなく、コーチングを通じて自己理解をするプロセスだけでも、本当に意味があることです。あと、コーチングでは目標がない人、わからない人でも、未来を描く伴走をします。

古村: 「この程度のテーマでコーチングに行っていいのかな」って遠慮してしまう人もいますよね。

えり: それは全然気にしなくていいです!こんな些細なことでって思うかもしれないけど、私たちはもう来てくれてありがとう、よく来たねって思っています。申し込むのだって勇気がいることじゃないですか。そこにまず来てくれたことが嬉しい。「こんな程度で来たんですか」なんて言うコーチがいたら、それはヤブなので気にしなくていいですよ(笑)。

古村: 大事なのは、限界まで溜め込む前に来てほしいということですよね。

えり: そうです。私みたいにプツッと切れてしまってからでは、コーチングができる状態ではなかったと思います。限界の一線を超えてしまったら、もう病院でしか対処できなくなってしまう。だから辛くなくても、早めに話しに行った方がいい。コーチングはそういう段階で使えるものだと思っています。

古村: ただ、一点だけ会社としてのポリシーもお伝えしておきたくて。コーチングって、自分が変化することを自分に約束して、人に伴走してもらうものなんですよね。だから心がしんどすぎて、そういうアクションが取れない状態の人には、別のアプローチの方が合っている場合もある。

CoParentsでは、現在進行形で心療内科に通われている方や、直近まで通われていた方には、まずそのことをコーチに伝えてもらうようにお願いしています

参考:CoParentsの免責条項

えり: そうですね。提供する側が誠実であるために、私たちがセッションをするときも、そのようなメンタル面の情報は確認します。

古村:ただ、通院中だからといって一律にコーチングを受けてはダメということでもなくて。並行してコーチングを受けて問題ない方もいれば、逆にどこにも通っていないけど心がかなり限界という方もいる。だから体験を受けてみて、今の自分でもできそうだという感覚があれば、心療内科通院中の方については、かかりつけの先生に相談して受講を検討してみてほしいですね。

ちなみに、コーチングではなく、身近な人に相談するのってどうでしょう?誰に話せばいいか、という選択も難しいですよね。

えり: これはケースバイケースで。身近に相談できる人がいればそれが一番ですが、いない人も多い。あと、聞く能力って意外と人によって差があって。自分の話を途中で遮って自分の話を始めてしまう人とか、共感より先に「じゃあこうしたら?」って解決策を出してくる人、男性脳にありがちなんですが…そういう感じだとやっぱり話しにくい。うまく聞いてくれる人が周りにいなければ、プロの第三者に頼るのが有効だと思います。

評価をやめると、自分が見えてくる

古村: 実際にえりさんのコーチングを受けた方の話もしたいなと思って。えりさんの卒業生の方で、インタビューをさせていただいた方のお話です。インタビュー記事の掲載許可を頂いているので、ここでもエピソードを紹介させていただきますね。

その方は、仕事と子育ての両立に追い詰められていました。頭が回らなくなったり、電車を乗り間違えたりするくらいしんどい状態だったんですが、ご本人には「うつかも?」とか、そういう自覚がなかったそうです。

その方は、学生時代は運動部で、大きな大会にも出るくらいの選手だったそうです。その運動部で培った強い精神が、「努力・根性が命。やめることや続けないことは甘えだ」という、頑張りすぎてしまう思考の癖に膨らんでしまっていたことがコーチングを通じて見えてきた、という方でした。えりさんが、この方との関わりの中で学んだことってありますか?

えり: 私はこの方から教えてもらったことがたくさんあって。1番のキーワードは「評価や判断を手放す」ということかな。その方は、「そんなんじゃダメだ、もっと頑張らなきゃ」って自分の状態にどんどん評価をつけてしまっていたんですよね。それが自分を受け入れることの邪魔をしていた。

古村: 評価や判断を手放すって、具体的にはどういうことですか?

えり: 要するに自己受容です。大事なのは、自己受容とは、ネガティブな感情だけじゃなくてポジティブな感情にも、良いも悪いもつけないことなんです。ただ「そうなんだね」と受け取る。肯定でも否定でもなくて、ただ受け取る。

そうしていくと、その感情を感じたこと自体について自分を責めなくなっていきます。すると、どうして私は悲しいと感じたんだろう、嬉しいと感じたんだろうって、自分の感情をニュートラルに受け取って考えられるようになります。そうやって考えていくと、自分の軸や価値観が見えてきます。

古村: それって子育てにも繋がりそうですね。

えり: まさにそうで、子どもに対しても「なんでこんなに言うこと聞かないの!」じゃなくて、「あ、今何かいやなことがあったんだね」と観察できるようになる。ママさんにこそ伝えたい視点です。

苦しくても、変わりたい人へ

古村: もう一人、えりさんの卒業生の方の話をしたいなと思っていて。「何がしんどいか分からなかった」という方のケース、覚えていますか?

えり: はい、もちろんです。

古村: この方、ワンオペで長年しんどかったんですが、ワンオペという状況を取り除いたとしてもしんどさがなくならないんじゃないかという感覚をずっと持っていて。コーチングを通じて見えてきたのが、幼少期からの「自分さえ我慢すればいい」という思考の癖だったとおっしゃっていました。

えり: この方はカウンセリングも受けていたんですが、「なんだか物足りなかった」とおっしゃっていて*。多分、話は聞いてもらえたけど何も変わらなくて、もう少し踏み込んできてほしかったんじゃないかなと思うんですよね。コーチングって、原因を見るだけじゃなくて「じゃあどうするか」というところまで一緒に行くので。苦しい状態でも「変わりたい」という思いがある方には、コーチングが合っているかもしれません。

古村: コーチングとカウンセリングの違いって、まさにそこですよね。

えり: そうだと思います。一般的なカウンセリングは「なぜそうなったか」を丁寧に扱ってくれる。コーチングはそこから「どう変わっていくか」という未来を一緒に描いていく。どちらが良い悪いではなくて、その人のニーズに合った方を選んでほしいですね。

Q&A:うまくいっていてもコーチングは必要?

古村: 参加者の方からこんな質問が来ています。「体験コーチングを受けてえりさんのファンになりました。今は悩みから抜け出して、キャリアの方向性も決まっています。自分としてはえりさんとまた話したいけれど、コーチングが必要な状態ではないという状況です。うまくいっていてもコーチングが必要なケースがあれば聞かせてください」とのことです。

えり: わあ、嬉しい。ありがとうございます。うまくいっていてもぜひ使ってほしいです。うまくいっている時も、人間何かしらありますしね。

その上で、うまくいっている時でもコーチングが有効なケースは2つあって、1つはコンディションを維持するための「メンテナンス」として。ジムみたいな感覚ですね。

もう1つは、さらなる挑戦をしたい時や、環境が変わる時です。コーチって、クライアントさん以上にクライアントさんを信じてくれる存在なんですよ。自分以上に自分の可能性を信じてもらえることで、もう一段手を伸ばせたりするんですよね。

Q&A:コーチングで質問にうまく答えられるか不安です

古村: もう一つ、参加者の方からこんな質問も来ています。「コーチングに興味はあるんですが、コーチからの質問にうまく答えられるか自信がありません。自分に自信がないので、コーチから突っ込まれた時に逆に落ち込みそうで、体験の申し込みになかなか踏み出せません。コーチングではどんな質問があるんでしょうか?セッション中にうまく言語化できない時はどうなりますか?」とのことです。これ、めちゃくちゃいい質問ですね。

えり: まず、コーチングを受ける方がうまく答えられないのは、コーチの力量の問題なので(笑)、ご自身を責めなくて大丈夫です。

古村:受ける側が質問に上手く答えられない時は、コーチが別の角度の問いに変えたりとか、工夫するものですしね。

えり:あと、コーチングでどんな質問があるかというと、意図的に抽象的な質問をすることが多いんですよ。「絶対に失敗しないとしたらどんなことをしたいですか?」とか、「10年後のベストショットはどんな1枚ですか?」とか、直感に訴えるような問いかけをします。キャリアプランを整理する前に、まずどうありたいかを一緒に見ていくイメージです。

古村: 言語化が苦手な人はどうしたらいいんでしょう?

えり: 言語化できない方は、むしろ私達のコーチングは向いていると思います。CoParentsのコーチたちは、体を使ったコーチングが得意です。だから、言葉にならなくても「この感じです」という感覚でセッションを進めることができるので。何もかも話せなくていい。でも、本音の思いを出してもいいと感じてもらえる安心安全な場を作ることが、私たちコーチの役割だと思っています。

世の光になりたい

古村:最後に参加者の方からこんなコメントが寄せられました。それを紹介して終わりますね。

えりさんにいつもコーチングでお世話になっております。共感できるお話ばかりで胸がいっぱいです。

通っている心療内科の先生にコーチングの話をしたら、興味がありそうな反応でした。先日友人も同じような反応で、コーチングがまだまだ浸透していないものなんだなと感じています。

前進したい、成長したいという気持ちはあっても、分かりやすいお悩み相談の場がないと感じています。(コーチングは)これから切り開いていく分野で、すごく需要があると感じます。自分と向き合うスキルを身につければ今より幸せになれると感じていて、CoParentsは今の世の希望の星だと思います。

えり:嬉しい涙

古村: ありがとうございます、本当に嬉しい。コーチングを知らなかった人、コーチングを言う言葉をなんとなく聞いたことがあるだけの人に、コーチングを通じて幸せになってもらうのが私の願いです。怖いコーチはうちにはいないので(笑)、ぜひ話すという体験だけでも、一度やってみてほしいなと思います。

おわりに

古村: では、えりさん。最後に、今日のイベントを聞いてくださっている方にひと言お願いします。

えり: 私が伝えたいのは、BTSの歌にもある「Love myself」、つまり自分と仲良くしようということです。ありのままの自分をいきなり好きになれなくてもいいんです。でも、自分に少しだけ好奇心を向けてみてほしいです

ちょっと自分の本当の声を聴いてみたくなったら、ぜひコーチングに来てください。


CoParentsには、えりさんをはじめ、安心して話せるプロコーチが在籍しています。なんかしんどくて、どうしたらいいか自分でもわからない、そんなワーママさんはぜひ一度体験コーチングにいらしてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

仕事と子育ての両立や今後のキャリアに悩みを抱えるワーママをコーチングでサポートする会社。コーチング予約累計数780時間。

目次