【イベントレポート】「女性は私ひとり」の研究職から、初の女性管理職へ。道なき道を切り拓いた先輩が語る、キャリアと子育てのリアル

「女性の少ない職場で、ロールモデルがいなくて不安」

「子育てで周りに迷惑をかけている気がして、肩身が狭い」

そんなモヤモヤを抱えるワーママたちに向けたオンラインイベントを開催しました。

ゲストは、CoParents所属のプロコーチ、浅井種美(通称:タミー)さん。

タミーさんのキャリアは、まさに「パイオニア」そのもの。大手化学メーカーに研究職として入社し、女性総合職の第一期生として活躍。育休取得も、管理職就任も、すべてが「女性初」という道なき道を歩んできました。

しかし、その語り口は驚くほど軽やかで、自然体。お話するとほっとするような優しさのタミーさんと、CoParents代表・古村千尋による対談の様子をお届けします。

【登壇者プロフィール】

ゲスト:浅井 種美(あさい たねみ / タミー)

CoParents所属プロコーチ。薬学部卒業後、大手化学メーカーに研究職として入社。女性総合職の草分けとして活躍し、人事やサステナブル経営など多岐にわたるキャリアを積む。現在も同企業に勤務しながら、コーチとして活動中。

ワーママ向けコーチングCoParents代表 古村千尋

モデレーター:古村 千尋(こむら ちひろ)

CoParents代表。政府系金融機関、国際機関、エネルギー分野のベンチャー企業の勤務を経て、Wharton MBAに進学・卒業。4歳息子の母。

目次

コーチングとの出会い

古村: タミーさんは化学メーカーでキャリアを積まれてきましたが、今はプロコーチとしても活動されていますよね。そもそも、なぜコーチングを始めたんですか?

タミー(浅井): きっかけは、社内で手を挙げて参加したダイバーシティ推進プロジェクトでした。そこで初めてコーチングに出会ったんです。

そこで、「自分が本当は何をしたいのか分からない」「どうしたらいいか分からない」といったモヤモヤについて、コーチングを通じてみんなで考えることで、とてもすっきりしました。

あと、プロジェクトメンバーみんなが、本当にやりたいことに向かって動き出した時のエネルギーがものすごいことを体感したんです。まさにミラクルという感じ。

この素晴らしい世界を一人でも多くの人に味わってほしいと思って、コーチングを学びはじめ、ライフコーチとしての活動を始めました 。

古村: 素敵ですね。では、今日はそんなタミーさんの原点にあるキャリアのお話を、今日は深掘りしていきたいと思います。

研究員30人中、女性は私だけ。行けるところまで行ってみよう

古村: タミーさんは「最初の女性総合職」として、ずっと第一線で働かれてきましたよね。そもそも、なぜ女性がほとんどいない研究職の世界に入ろうと思ったんですか?

タミー: もともと自分の能力を生かして社会に貢献したいという思いで薬学部に入ったのですが、新しい価値を生み出すモノづくりがしたかったんです。それに、自分のキャリアの中で「成長し続けたい」という思いがあって。研究職ならどんどん新しいことを吸収して、新しいものを作り出すこともできそうだなと思って、飛び込みました 。

古村: 当時の職場の環境はどんな感じでしたか?

タミー: 職場には30人くらい研究員がいましたけど、女性は私だけでしたね。

同期の女性たちとも「いつまで続けられるんやろうね、3年は頑張ろうね」なんて話していました。

とはいえ、最初から「定年まで勤め上げるぞ!」という強い意志があったわけではなくて、「どこまで行けるか分からへんけど、やれるところまでやってみよう」という気持ちでスタートしました。

30代・育休明け時代の切り抜け方

古村: さて、今回はタミーさんの2つの時代について聞いてみたいと思います。1つ目はCoParentsに来て下さるワーママさんが多い、育休明けの30代の時代です。当時の状況を教えて下さい。

タミー: 当時は時短勤務の制度がなかったので、フルタイムしか選択肢がなかったですね。あと、私が女性総合職として初の育休明けのケースだったので、「後輩達に『女性はフルタイムで働けない』というイメージを私がつけたらよくないな」と会社側とも相談しててフルタイムで働かなきゃという思いもありました。

当時は保育園も少なかったので、夫と母と私の3人体制で乗り切りました。毎朝、夫が片道35km離れた実家に息子を送り届け、夕方に母が車で息子と私の自宅まで送ってくれて、その間に私が仕事と家事を回す……という毎日でした。1日1日をなんとか乗り切る。そんな生活でしたね。

古村: それは壮絶……! 心が折れそうにはなりませんでしたか?

タミー: 体力的には本当にしんどくて、復帰半年で体重が10kg落ちました(笑)。夫も死にそうな顔をして送迎の運転していたので、「これはあかん」と思って、もっと育児環境の良い場所に引っ越しをしました。

仕事の面では「ここまではやるけど、ここからはやらない」という線引きを意識していました。あとは、とにかく効率化を考えました。実験をオートメーション化したりとか。

古村: 物理的な工夫もそうですが、メンタル面はどう保っていたんですか?

タミー:自分の状況や思いを、とにかく周りに話していました

上司やチームメンバーだけじゃなく、別部署の同期とか、お昼休みに一緒にランチする人とか、全方位に開示していました。「今こういう状況で困ってるねん」とか「こうしたいと思ってるねん」って。

そうすると、誰と誰が繋がっているか分からないもので、意外なところから理解が得られたり、助けてもらえたりするんです

古村: 直接関係ある人にだけ相談するのではなく、味方を増やすためにオープンにする。これは今の私たちにも通じる重要なポイントですね。あと、当時の時代背景を考えると、旦那様は協力的だなという印象です。

タミー:そうですね。まぁ今の時代みたいに2人で育児をするって感じではなかったけど、無言で送迎とか協力してくれた、態度で示してくれたので、そこはありがたかったですね。

古村:きつくて辞めようと思ったことはありました?

タミー:私の母も仕事を変えてまで応援してくれていたし、中途半端に辞められないなってのはありました。でもできるところまでやって、ダメやったらその時考えようって思っていました。実際、育休明け1年半くらいのときに、「もうあかん」と思ったときはあったけど、引っ越しして環境を改善したことで乗り越えました。

40代・女性初の管理職時代。工場のおっちゃんたちの中で見つけた自分の強み

古村: その後、たみーさんが40代の時、お子さんが小学生の時に管理職になられたんですよね。その時の苦労ってどんな感じでしたか?

タミー: 私は割と楽観的なので、苦労というほどものはないんやけど(笑)でも管理職になった途端、「私は会社に何が貢献できるんやろう?」という猛烈な不安に襲われました。がむしゃらに頑張ってきて、管理職になれた。でも、私がこれ以降、出来ることって何だろう?私の強みって何だろう?って。

しかもジョブローテーションで、研究開発から工場の管理職になったんです。研究職はアカデミックな雰囲気ですが、工場は現場の職人肌の男性ばかり。「今度来た女の管理職、お手並み拝見やなぁ」みたいな空気を感じて(笑) 。あんまり気にはしてなかったですけどね~。

古村: 完全アウェイですね(笑)。では、「私に何ができるだろう」というモヤモヤはどうやって乗り越えたんですか?

タミー: 当時はまだ霧の中にいる感じやったんですけど、今振り返って思うのは、私の得意なことって何かな?というのをしっかり考えました。それで、私の強みは「人と人でチームを作って、結果を出すこと」だと思ったんです。

例えば、周囲から「ちょっとあの子仕事できへんで」と言われているような人でも、私と一緒に組むと、人が変わったように明るくなって働いて成果を出して出してくれた。そこに活路があるなと思ったし、私が喜びを感じたんですよね。

だから、社会人大学院に入り直して「社会疫学(職業や所得、人とのつながり、国や地域の政策や文化など、社会的・経済的な状況が人々の健康に及ぼす影響に焦点を当て、その関係性を考察する学問で)」を学びました。「チームの関係性が良いと、実際に成果が上がる」ということを、数字、エビデンスで証明したかったんです 。

古村:恥ずかしながら社会疫学という学問をこれまで知りませんでした。自分の強みをアカデミックな面からも強化していて素敵です。

タミー:苦手なところの改善と強みを伸ばすことのどちらがいいか迷ったんですよね。でも、同じ仕事をするなら、私の顔が見える仕事というか、誰もあまりしていないことをした方が面白いかなって思って。

古村:オールラウンダーになるより、自分の強みを活かして、自分にしかできないことをするって感じですかね。ところで、管理職になること自体に迷いはなかったのですか?

タミー:ここまで家族や職場の人に助けてもらってきて、みんなのおかげで私がある、みたいな感じでした。だから、私は意外とリスク回避する性格なんですけど、機会があるならとトライして、なんかやれるところまでやってみて、あかんかったらそこで相談しようって感じで当時家族とは話してました。

「子持ち様」なんて思わなくていい。

古村:仕事と子育てをする中で、失敗というか、やばい!みたいな時はありましたか?

タミー:この前息子に「お母さん、子育てでなんかめっちゃ失敗したことあった?」と聞いたら、「ないんちゃう?」って言われました(笑)

私、能天気な性格なので、たぶんいっぱい失敗してるんですけど、覚えてないんですよね(笑)

あ、でもやっぱり睡眠時間が短いせいで、出張行く日に寝坊して、もう間に合わない!ってなって謝り倒したりとか。

あと、私や息子が病気になると、常に時間ギリギリの生活をしていたから、仕事でちょっと遅れて対応します、となって心配や迷惑かけたことはありましたね。

古村: 最近、「子持ち様」なんて言葉もあって、周囲に過剰に配慮して、我慢を重ねてしまうワーママも多いと思うんです。タミーさんの話を聞いていると、思い詰め過ぎないでやるってのが大事な気がします。

タミー: きっと会社の人は皆さんの「人」を見てくれていると思います。私はそう信じています。

古村:日々一生懸命やっている姿を、きっと周りの人がちゃんと見てくれていますよね。確かに1つ2つ迷惑をかけることがあるかもしれないけど、皆さんが毎日頑張っていることをきっとわかってくれている人がいるはずです。

子どもの教育-子どもは案外大丈夫

古村: これは私の今の悩みでもあるんですけど、フルタイムで働いていると、子どもの教育について十分に考えられていない気がしてしまって。保育園の同級生が公文に行き始めたそうなんです。うちも色々経験するチャンスは作りたいけど、平日の習い事はファミサポさんとか色々工夫しなきゃで、それを考えるのもしんどくて…たみーさんはお子さんの教育関連はどうしていましたか?

タミー:子供が1人だけだったから、というのもありますが、割と小さい頃から、子どもにどうしたいか聞いてましたね。中学受験も、息子がしたいと言ったからやりました。

スポーツとかも、息子がやりたいって言ったからには、やってみようという感じで、やっぱり土日とかは教育・お稽古対応で結構忙しかったですね。夫と私の母の全員の協力で乗り切った感じです。

古村:なるほどなぁ。うちは息子が4歳で、「これやりたい?」って聞いたら、全部やりたいっていうんですよ(笑)でも、まぁとりあえず「あんたがやるって言ったんやで(笑)」ということで、1回チャレンジさせるのがいいのかもしれませんね。

タミー: あとは、やっぱり息子に十分な時間を取って向き合ってあげられなかったというモヤモヤは、正直消えなかったです。

でも、息子が中学生くらいになって、人として対話ができるようになった時に聞いてみたんです。「お母さん働いててどうやった?」って。

そうしたら「え? 楽しかったよ」って、あっけらかんと言われて(笑)

古村: うわぁ、それは救われますね……!

タミー: さらに、「将来、奥さんには働いてほしい?」と聞いたら、「一緒に働きたい」って答えたんです。あ、私の働く姿を見て、それをポジティブに捉えてくれていたんやなと思って、すごく嬉しかったですね。

だから今悩んでいるママたちにも、「案外、子供は大丈夫だよ」と伝えたいです 。

古村: ちなみに、イライラして子供に当たってしまった時とかありました?さっき睡眠時間が少ない時もあったとのことで、しんどかったり時間に余裕がない時とかに。

タミー:ありましたよ。今でも思い出すくらい、悪かったなって思うことがありました。

古村:そのあたり悩んでいる方多いと思うんです。私も悩んでいます。

タミー: アドバイスになるかわからへんけど、寝る前の読み聞かせの時間にリセットしていました。1ページとかでいいから読む時間を習慣にして、その時に「さっきはごめんね」と素直に謝る。それを大事にしていましたね。

Q&A:男性がずるいと思ってしまう

古村: ここで参加者の方からの質問です。「女性は妊娠・出産でメンタルやあり方が揺さぶられます。そういう時、揺らがない男性を見て『いいな』と思ってしまいます。どう考えたらいいでしょうか?」という切実な声です。タミーさんはどう思いますか?

タミー: 確かに自分ではどうしようもない変化ってありますよね。でも私は、「自分が女性で良かったな」と楽観的に捉えているんです。

「揺らぐ」ということは、自分で自分と向き合う時間が持てるということ。ちょっと立ち止まって、自分を見つめ直す時間として捉えてみたらいいんじゃないかなと思います。

後から振り返ると、その時に悩んだり揺らいだりしたことは、絶対に無駄にはなっていないはずですから 。

古村: 「揺らぎ=自分を見つめ直すチャンス」と捉える視点の転換ですね。

30年働いてわかった、大切なたったひとつのこと

古村: 最後に、最初の女性総合職として、道なき道を歩いてきたタミーさんが、大切にしていることを教えてください。

タミー: なんか、私がすごいとかじゃなくて、たまたま生まれた年と環境がそうやったから、最初の女性総合職になっただけで。これまでに女の先輩がいなかっただけであって、実際仕事をすると相談しながら自由に色々やらせてもらえて。大変なこともあったけど、良かったなって思ってます。

私が通っていた学校のシスターがよく言っていた言葉で、「最善を尽くす(The Best)」というのがあります。その時は「へぇ~」としか思っていませんでしたが、これが今の私のベースになっています。

最善と言っても、何か大きなことを成し遂げるという意味ではありません。

今日一日、目の前にある小さなことに一生懸命向き合うこと。その積み重ねで今の自分がいてるかなって思うんで、構えることなく1個1個着実に、正直にやっていくのがいいんじゃないかなって思います。

古村: 今日のテーマは「女性が少ない職場で自分らしく生きる」だったのですが、「女性が少ない」とか関係なく、人としての生き方の話ですね。

タミー: そうですね。あと、「人の可能性は案外、自分が思っているよりすごい」ということに、長い人生の中で気付きました。

だから、もし「ちょっとこれやってみたいな」と思うことがあれば、ぜひ小さな一歩を踏み出してみてほしいですね。

おわりに

タミーさんという人を「女性初」という肩書だけで捉えると大間違いだなと思います。ちょっと適当で(笑)、楽観的で、でも目の前の人に、物事に真摯に向き合い続けてきたタミーさん。

皆さんの置かれている環境に関わらず、タミーさんの「ちょっとやってみよう」精神は多くの人の参考になると思います。

さて、CoParentsにはタミーさんのような素敵な人柄のプロコーチ達が在籍しています。

コーチングではコーチ本人の価値観を出したり、アドバイスをすることはありません。受ける人自身が自分で気付いていくことを大事にします。

しかし、結局はコーチングも人と話すということなので、コーチの人となりも大事だと考えています。CoParentsではこれからも、コーチの人間味が伝わり、ちょっと役に立つようなイベントを開催していきたいと思います。

そして、タミーさんや他のコーチにちょっと話してみたい!と思った方は、ぜひ体験コーチングをお試しください。

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この記事を書いた人

仕事と子育ての両立や今後のキャリアに悩みを抱えるワーママをコーチングでサポートする会社。コーチング予約累計数780時間。

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